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2025.8.15

【修理リポート】重要文化財「満済まんさい像、義賢ぎけん像、義堯ぎぎょう像、義演ぎえん像、覚定かくじょう像」(京都・醍醐寺蔵)― 顔部分の絵の具 古い肌裏紙に付着

満済像など5幅の肖像画に見入る醍醐寺の飯田俊海学芸員(左)ら(京都国立博物館で)

室町から江戸時代にかけて醍醐寺三宝院(京都市伏見区)の門跡(住職)を務めた満済まんさい義賢ぎけん義堯ぎぎょう義演ぎえん覚定かくじょうの5人の肖像画について、所蔵者の醍醐寺、文化庁、修理を担当する松鶴堂(京都市東山区)の担当者らが〔2025年〕3月26日、京都国立博物館(同)の文化財保存修理所で今後の修理方針を協議した。

肖像画はそれぞれ縦90~96センチ、横41~50センチ。像の着衣、持ち物、体勢、衣類のしわの位置などが同じ像容で描かれており、時代を隔てた制作でありながら強い一体性が見られることから、2020年に5幅一括で重要文化財に指定された。

しかし5幅とも経年劣化による折れが生じ、絵の具の膠着こうちゃく力も著しく低下していた。このため24年度からの5か年計画で統一的な修理を行うことになった。

この日は松鶴堂の担当者が初年度に実施した損傷状況の調査結果を報告した。制作年代が最も古い満済像の場合、顔部分のオリジナルの絹が失われ、絵の具が古い肌裏紙はだうらがみ(補強などのため、作品の裏面に最初に貼り付ける紙)に付着したことによって像容が保たれ、古い肌裏紙を除去すると絵の具も剥がれてしまうことが判明。このため古い肌裏紙の除去は、文化庁の担当者と協議し、慎重に進めていくことを確認した。

醍醐寺の飯田俊海学芸員(54)は「5幅の絵の調査結果を聞き、裏打ちや墨書き、巻き軸の金具などに過去の技術者が様々な思いを込めて修理を進めたことがわかった。今回の修理では最新の技術が駆使されるので、その過程で、さらに新しい発見があると期待している」と話した。

(2025年8月3日付 読売新聞朝刊より)

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