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2022.10.2

茶文化の深遠vol.6―土風炉・焼物師 十八代 永樂善五郎さん

平安から鎌倉時代にかけて中国から伝わった喫茶法は時代を経て徐々に和様化し、豊臣秀吉に仕えた茶人・千利休に至って、独自の文化「茶の湯」が大成されました。江戸時代には利休の子孫である三千家さんせんけの家元に茶道具を納める10の職家しょっか千家十職せんけじっしょく」が京都で技を磨きました。これらの家を訪れて歴史と仕事について尋ねました。

技術の再興のため原点に返る…十八代 永樂えいらく善五郎ぜんごろうさん(50) 
十八代 永樂善五郎さん=河村道浩撮影

湯をわかす釜をかける風炉ふろのうち、「土風炉どぶろ」は素焼きの土器を磨き上げて作る。

永樂家は初代が土風炉師で、陶磁器を作り始めたのは十代了全が三千家の後援を受けてから。染め付けや金襴手きんらんでなど多彩な技法で華やかな器を作ってきた。

父の後を継いで昨年3月、襲名。「一番の目標は土風炉を再興すること」と話す。永樂家では明治期以降、需要が多くないこともあって土風炉を作っておらず、原点に返る意味もある。

その途上で、土風炉の技術を生かした茶道具に力を入れている。水指みずさしなどを粘土で形成し、磨き、窯でいぶし、ススで黒くなったのを磨いてツヤを出す。「真っ黒な作品世界も一つの柱としたい」。来年5月、東京で襲名披露展を開く予定だ。

永樂善五郎さん作「土風炉仕立て灰器」「童子香合」「舞妓香合」「灰釉照葉ノ絵茶碗」(左から)

(2022年9月4日付 読売新聞朝刊より)

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