若王寺(京都府精華町)所蔵の重要文化財「木造智証大師坐像」(平安時代後期)の修理が完了し、3月11日、同寺の大師堂に戻された。
智証大師・円珍は平安時代初期に活躍した天台宗の高僧で、本作は滋賀・三井寺(園城寺)所蔵の国宝「御骨大師」を写した模刻像。昨年5月から美術院(京都市下京区)が、京都国立博物館(同市東山区)の文化財保存修理所で作業を進めていた。
大師堂に運ばれた坐像は養生の布や紙が解かれ、約10か月ぶりに檀上幸裕住職(49)の前に姿を見せた。修理を担当した美術院の松井海音子・主任技師は、顔の彩色層が浮き上がった部分の剥落止めや、台座の補強など修理内容を報告した。
赤外線カメラによる撮影などを行った結果、坐像の目尻には墨線が引かれ、眉毛も繊細に描かれていたことが判明。衣の部分には文様もあり、大ぶりの木材をぜいたくに使う構造だったことも確認したという。
檀上住職は「きれいに修理していただき、雰囲気が明るくなったような気がする。この先もずっと守っていかなければならないという思いを新たにした」と喜んだ。
(2022年4月3日付 読売新聞朝刊より)
お寺から修理所への運び出し作業に密着しました