2021年度の修理助成事業の対象となった国宝「
来迎図は3幅合わせて縦約2メートル、横約4メートルに及ぶ平安仏画の傑作で、阿弥陀仏が往生者を迎えに来る様子が描かれている。中央で光り輝く金色の阿弥陀仏に対し、周囲では乳白色の肌の
詳しい制作年代はわかっていない。皇族が描かせたとの説もあり、16世紀には高野山へ伝わっていたとされる。
坂田墨珠堂の坂田さとこ社長らは、霊宝館の収蔵庫にあった来迎図を慎重に広げ、ペンライトで照らしながら傷み具合を丹念に調査。裏打紙の接着力の低下や絵の具の剥離、表面の汚れが確認された。今後は裏打紙を取り除いて絹だけの状態とし、新しい裏打紙を重ねて修理を施すという。
坂田社長は「国宝の持つ表現、色彩は平安時代から現在まで多くの人に守られ、大切に受け継がれてきたもの。それを崩すことなく、我々が持つ全ての技術を尽くして保存性を高めたい」と語った。
搬出時には、霊宝館の学芸員で僧侶の鳥羽正剛さん(53)が般若心経などを唱えて送り出した。鳥羽さんは「高野山の宝をこれからもより長く後世に残していくために、多くの方のお力添えをいただいた。5年後に戻ってきたら、みなさんにお披露目したい」と話した。
(2021年8月22日付読売新聞朝刊より)
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