2021.12.17

【和菓子ごよみ12月】柚子のお菓子―冬に欠かせない 心を満たす香りとほのかな苦み

髙島屋の和菓子バイヤー・畑主税さんが、毎月の行事や旬の素材にちなんだ、とっておきの和菓子を紹介します。12月は「冬至」の柚子ゆず湯でもおなじみ、柚子を使ったお菓子です。爽やかな香りとほのかな苦みで、近年では海外でも「YUZU」は人気とか。羊羹ようかんに餅菓子に饅頭まんじゅうと、和のスイーツも多彩にそろいました。

果皮を丸ごと蜜漬け 贅沢な出雲の銘菓

島根県・出雲地方では、柚子の皮を細かく刻んで砂糖で煮詰め、「柚香ゆこう」というジャムに仕上げたものを好んで味わうそうで、柚子を使ったお菓子も多くの店で作られています。

彩雲堂の「柚衣」は、小さな柚子がまるごと使われています。まずは果皮だけを残し、内側の果肉の部分を全部くり抜いて蜜に漬けます。そのようにして仕上げた「器」状にした中に、さらしあんとも言うべき、きめ細やかな薄墨色のあん―松江の和菓子屋さんでは多く用いられ、「朝汐あさしおあん」と呼ばれています―を寒天と合わせたものを流し込んでいきます。さらに小豆の粒を散らして固めて…あまりに贅沢なお菓子と言えましょう。

お茶請けにはもちろんですが、この香り高い柚子の風味は、お酒にもよく合いそうです。

【柚衣】1個 税込378円
彩雲堂/松江市天神町124
TEL:0852-21-2727
https://netshop.saiundo.co.jp/
※販売期間は11月〜3月末

徳川将軍も味わった! もちもち食感の「ゆべし」

「ゆべし」という名前のお菓子は全国で親しまれています。しょう油やみそを使った郷土菓子として東北に多く見られるほか、「柚餅子」という漢字をあてて、柚子の香りの高い餅菓子も各地で作り継がれています。

江戸時代・文政12年(1829年)の創業と伝わる新潟の老舗・本間屋の「越後柚餅子」は、竹皮に包まれており、その皮をむくとオレンジ色の本体が姿を見せます。驚くのは、もちもちとした柔らかさ! もち米と砂糖に、生の柚子を加えて練りあげて蒸すのですが、一口いただくと、甘みと共に、柚子の香りが立ち上がります。水飴とゼラチンなどを加え、ひとつひとつ小分けにされた「練り柚餅子」も食べやすく、柚子の香りが楽しめます。

長岡藩主から14代将軍・徳川家茂にも献上されたという銘菓。歴史に思いを馳せながらいただきたい一品です。

【越後柚餅子】蒸し柚餅子 1本 税込700円、練り柚餅子 12個入 税込540円
本間屋/新潟市西蒲区福井1845
TEL:0256-72-3580
https://shop.ng-life.jp/honmaya/

3色の煎餅で「雪月花」を表現

柚子の産地の一つ、大分県の橘柚庵きつゆうあん古後老舗こごろうほは、柚子のお菓子だけを作り続けてきた名店です。柚子の果皮に砂糖を加えて煮詰めた看板商品の「甘露柚煉」は、黄色に美しく輝いています。黄色いジャム状ですが、意外にも、果汁などは用いず、果実の内側の白い果皮のみを使用しているのだとか!

完成した柚煉はつぼに入れて貯蔵され、銘菓「雪月花」に使われます。もち米で仕上げた丸い種煎餅は、中に挟んだ柚煉とよくなじんでいます。煎餅をよく見ると、表面に「雪月花」の文字が刻まれ、ほのかに色が付けられていることに気づくでしょう。白は雪を、薄い青色は月を、薄いピンクは花を表現してます。

パッケージは、大分ゆかりの日本画家・福田平八郎氏と、彫刻家・朝倉文夫氏が手がけています。他にも、和菓子の包装紙やしおりなどは、有名な芸術家によるものも多いので、味わう前にぜひチェックしてみてください。

【雪月花】6包(12枚)入 税込1242円
橘柚庵古後老舗/大分市千代町3-1-10
TEL:097-532-5733

ヘタまで再現 愛らしく香り高い饅頭

この季節の楽しみの一つが「柚子饅頭まんじゅう」。ふっくらと丸い形、淡い黄色の饅頭生地に、羊羹や煉切などでヘタの部分も再現され、見た目も愛らしい。冬には絶対に食べておきたいお菓子です。

東京・一炉庵の「柚子饅頭」は、京都・丹波のつくね芋を使用し、上用粉と柚子の果皮を加えて作られており、芋の香りの中に、淡く柚子の香りが漂います。徳島県産の柚子を取り寄せ、表皮だけを削って砂糖と混ぜたものをってジャム状にするそうです。「苦みを出さず、香りが飛ばないように」とのこだわりです。

生地の表面にはデコボコとくぼみがあり、中のこしあんがのぞいているのがなんともリアル。淡い黄色の生地には、ところどころに黄色い柚子の果皮も見えます。毎年12月上旬から冬至までの販売予定です。

【柚子饅頭】1個 税込350円
一炉庵/東京都文京区向丘2-14-9
TEL:03-3823-1365
https://www.wagashi.or.jp/tokyo_link/shop/1110.htm

収穫から皮むきまですべて手作業 温かみあふれる羊羹

島根県・江の川のそばに店を構える「富士屋本舗」は、明治35年(1902年)創業。現在は姉妹で切り盛りされており、柚子の収穫や皮むきから、羊羹を作る作業のほとんどは手で行っているそうです。

練り羊羹でありながら、口溶けの良さに驚かされます。さらりとして、あんの粒子がとても細やか。口の中に柚子の香りが広がっていきます。

「祖父の代から安心・安全をモットーに、郷土の味、伝統の味を守っています」と同店の菅多優美子さん。全国菓子大博覧会で金賞を受賞した味を守り継ぐ、とても温かみのある味わいです。

【柚子羊羹】1本 税込800円
富士屋本舗/島根県美郷町浜原385-3
TEL:0855-75-0137

畑主税

プロフィール

髙島屋和菓子バイヤー

畑主税

1980年生まれ、大阪府出身。2003年に髙島屋に入社し、洋菓子売り場の担当を経て、06年和菓子売り場の担当に。京都の和菓子を作りたてのままで提供したいという思いから、人気店の上生菓子を自ら京都で仕入れ、新幹線で運び、夕方に店頭に並べ話題を集めた。全国1000軒以上を巡り、食べた和菓子は1万種以上。著書に「ニッポン全国 和菓子の食べある記」(誠文堂新光社)。ブログ「和菓子魂!」(http://blog.livedoor.jp/wagashibuyer/) Twitter:@wagashibuyer

Share

0%

関連記事