2022.3.7

【文化財継承の現場vol.1】所蔵者、技術者、行政つなぐ…京都国立博物館

1000年以上の歴史を経た絵画や仏像などの文化財は、何度も修理を繰り返し、その姿を今に伝えられてきました。その作業を主に担っているのが、国立博物館に備えられた修理施設です。修理の技を磨く技術者と、専門知識を備えた研究員が連携して、文化財を継承する現場を訪ねました。

京都国立博物館文化財保存修理所にある「修美」の工房。集中力の必要な繊細な作業によって、いにしえの文化財が次の時代に継承されていく=河村道浩撮影
日本初の公営修理施設 大原嘉豊よしとよ・保存修理指導室長に聞く

京都に最初に修理所が作られたのは、伝統産業の基盤があったためだ。紙や絹に描き記された日本の書画は、飾ったり保存したりするために表具師によって表装されてきた。江戸時代までは、新しい絵の表装も古い絵の修理も彼らが行っていた。技術者が切磋琢磨してきたため、京都には技術の蓄積がある。

京都国立博物館の文化財保存修理所

修理所は所蔵者、修理業者、行政機関のネットワークの要と言える。

京都国立博物館の研究員は、所蔵者、修理業者の技術者、指定文化財なら文化庁や県など行政関係者と連携し、様々な制約の中で今出来る最善の修理を模索する。文化財の何が大事か、修理の際に何を残して何を取り除くか、難しい判断が求められる場面で、研究員の知見が役に立つ。

所蔵者、修理技術者らと修理方針を検討する京都国立博物館の大原嘉豊さん(右から2人目)

本当に手間暇をかけてオリジナルの価値を絶対に毀損きそんしない修理をし、所蔵者と信頼関係を築く。口づてで評判は広まり、それが文化財修理の好循環を生み、後継者育成につながっていく。

京都国立博物館としてのメリットは、修理の際にしか見聞き出来ない情報に触れ、研究を底上げできることだ。発見を盛り込み、新しい視点で歴史を分析していかなければ、博物館の展示は枯れてしまう。文化財への理解を深めてもらえるよう充実した展示をするためにも、修理は必要だ。

(2022年2月17日付 読売新聞朝刊より)

京都国立博物館の修理所の工房の一つ「光影堂」。吸水紙で表面の汚れを取り除くクリーニング(光影堂提供)
技術者たちの細かな作業が繰り返される
絵画や古文書などの修理に用いる道具(修美で)

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