2022.5.13

「早来迎」輝き再びvol.3…表装裂や軸首も国宝にふさわしく

文化財修理は多くの「手仕事」によって支えられている。「早来迎」の修理にあたって新調された部材も、京都の職人によって作られた。

草木染の絹糸 図案から描いて新調

修理が完成した「阿弥陀二十五菩薩来迎図」(早来迎)の表装=前田尚紀撮影

表装裂ひょうそうぎれも国宝にふさわしいものを」――。書画を掛け軸などに仕立てる際に用いる「金襴きんらん」と呼ばれる裂を、修理を担当した光影堂・主任技師の沖本明子さんが図柄から描き起こして新調した。

昔の風合いに近い仕上げにこだわり、絹糸はあえて均一に染めず、色ムラが出るよう草木染を選んだ。

金箔を細く裁断して作る金糸も太さはまちまち。材料集めに携わった織物問屋「鳥居」の担当者は「かつては糸屋、染め屋、金糸屋と分業されていましたが、いまでは金糸を作れる業者も減りました。こうした技がないと、文化財修理が立ちゆかなくなります」と話す。

裂を織ったのは、「廣信織物」(京都市上京区)の廣瀬純一さん(39)。選定保存技術「表具用古代裂<金襴等>製作」の保持者だった父・賢治さんの後を継ぎ、西陣織の技を磨いている。「何十年も残ると思うとやりがいがある」と、昔ながらの機織り機に向かいコツコツと作業を続けた。

軸首 美麗な透かし彫り

軸の先に付けられた金具「軸首」も、新たに作られた。唐草文様が美しい、透かし彫りの特注品だ。

美しい透かし彫りが施された軸先の金具(光影堂提供)

法会などでハスの花びらをかたどった紙などをく「散華」で用いられる「華籠けこ」を参考に、沖本さんがデザインした。

軸首の金具には幾通りものデザインを検討した

制作したのは、選定保存技術「美術工芸品かざり金具製作」保持者の松田きよしさん(60)。「ボリューム感を出すため」(沖本さん)、通常より0.5ミリほど厚い2.6ミリの板を用いたため、彫り進むのにも時間がかかったという。

透かし彫りの内側には銀を敷いた。沖本さんは「銀は年を経ると黒っぽく変色します。100年後に銀の部分だけ取り換えれば、外側の金具はまた再利用してもらえる」とねらいを説明する。未来への思いが込められている。

(2022年5月1日付 読売新聞朝刊より)

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