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2023.3.10

【ポケモン×工芸展作品紹介 5】 進化する 多様なキメラ

企画展「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」が〔2023年3月〕21日、金沢市の国立工芸館で開幕する。陶磁、金工、ガラスなど工芸の各分野で活躍する作家20人がポケモンをモチーフに作品づくりに挑み、完成させた約70点を展示する。作家の横顔や作品の特徴、駆使した技巧などを紹介する。

 

◇陶芸◇ 植葉うえば香澄さん (44)

(京都市)

もこもことした頭部から背中にかけて、色鮮やかな葉っぱの文様が散る。体を丸めると花のように見えるポケモン・シェイミを模した花器。図柄に、京都市の京北地域に生えるシダを取り入れたのは、力強い生命力に驚いたからだという。

架空の動物と器を「合体」させた独創的な陶磁をギリシャ神話の怪物にちなんで「キメラ」と銘打ち、長年制作してきた。器を埋め尽くすような複雑な文様に下絵はなく、「余白を埋めていく」ように直接絵付けを施している。

今回、シェイミの花器を始め12点を出品する。ポケモンに親しんできたわけではないため、「陶芸で表現できるのはどれだろう」と手探りでスタートした。図鑑などをめくるうち、次第にかわいらしいポケモンに夢中になった。

植葉香澄<羊歯唐草文シェイミ>2022年 個人蔵 撮影・斎城卓

思い返せば、制作で駆使した京焼の絵付けも勉強するうちにのめり込んだ。幼い頃は、京友禅の絵師だった祖父の図案が好きだった。しかし、京都市立芸術大に進み現代的なオブジェを作り始めると「伝統工芸は古くさい」と敬遠するようになった。卒業後、陶芸を学び直すうちに、野々村仁清ら京焼の魅力にとりつかれた。祖父の表現への憧れも思い出し、現在のスタイルを確立させていった。

モチーフにしたポケモンのうち、サルノリ、ヒバニー、メッソンは体に対して頭が大きく「陶芸で表現できるぎりぎり」の姿。折れたり割れたりしないよう、制作には細心の注意を払った。「普段なら手を出さない造形で、こういうフォルムもあり得るんだ」と次回作への刺激を受けた。

これまでも、旅先で見つけた柄やイスラム美術など、外からの影響を作品に取り込み、想像力を広げてきた。ポケモンに出会い、さらに多様なキメラが生まれる。

▽会期 〔2023年〕3月21日~6月11日。休館は月曜(5月1日は開館)、5月14日。問い合わせはハローダイヤル050・5541・8600。
▽主催 国立工芸館、NHKエンタープライズ中部、読売新聞北陸支社
▽特別協力 株式会社ポケモン
▽制作協力 NHKプロモーション
© 2023 Pokémon.
©1995-2023 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.

(2023年3月10日付 読売新聞朝刊より)

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