刀鍛冶の吉原
「祖父を手伝って火おこししたり、
幼少の頃から刀が身近にある生活。自身の道も刀鍛冶に定めてからは、過去の名刀を手本に腕を磨いた。「刀作りは1000年以上続いている技術。良い刀を見て、学ぶことが大事。時代によって形や流行も違うが、特に鎌倉時代は素晴らしいものが残っている」
その頃から焼き入れによって生じる模様「刃文」の美しさを追求してきた。玉鋼の鍛錬など弟子とともに行う作業があるが、焼き入れは「刀の顔を作る作業。これだけは自分がやらないと」と、最もこだわる。丁子の実に似た、独特の乱れが特徴的な刃文を「吉原丁子」と評する人もいる。
吉原さんに学ぼうと、全国から刀鍛冶を志す若者が弟子入りし、工房で鍛錬から焼き入れまでの全工程を学ぶ。「うちは1年目から刀を作らせる。全て手作業だからセンスも大事。厳しい世界だけど、みんな一人前にしてやりたいと思ってますよ」。独立して各地で工房を構えた弟子が、伝統の技術を受け継いでいる。
米・サンフランシスコにも仕事場を構え、メトロポリタン美術館などに自作の刀が買い上げられた実績もある。刀の魅力を伝える英語の本も出版してきた。「いっぱい作って、注文に間に合わせないといけないからね。体力にはまだ自信ありますよ」。国内外のファンに丹精込めた刀を届けるべく今も精進を欠かさない。
(2022年8月12日付 読売新聞朝刊より)
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