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2022.11.19

宮内庁三の丸尚蔵館収蔵の「喪乱帖」や「更級日記」「万葉集」写本など国宝に…文化審答申

「喪乱帖」(原跡 王羲之)宮内庁三の丸尚蔵館収蔵

文化審議会は18日、中国東晋時代の書聖・王羲之おうぎしの書簡を唐代に精巧に写した「喪乱帖そうらんじょう」など、宮内庁三の丸尚蔵館が収蔵する書跡・典籍を含む美術工芸品計4件を国宝に、同館収蔵の南蛮屏風などを含む計47件を重要文化財(重文)に、それぞれ指定するよう文部科学相に答申した。

同館収蔵品では「喪乱帖」のほか、歌人、藤原定家が書写・校訂を行った「更級日記」の写本と、「万葉集」の平安時代の古写本で書道史上の評価も高い「万葉集巻第二、第四残巻(金沢本)」が国宝に指定される。

旧石器時代の石器群は「最古」の国宝
「北海道白滝遺跡群出土品」 北海道遠軽町蔵

また、後期旧石器時代の約3万~1万5000年前に黒曜石などで作られた石器群「北海道白滝遺跡群出土品」(北海道遠軽町所有)計1965点の国宝指定も答申した。縄文時代の土偶などは既に国宝になっているが、旧石器時代は初めてで、最も古い時代の国宝となる。

三の丸尚蔵館収蔵品では、近世南蛮屏風の初期作である「紙本金地著色ちゃくしょく南蛮人渡来図」と、オランダ製世界図を基に制作された桃山時代の屏風「紙本著色世界図」などの重文指定も答申した。

建造物109件を登録有形文化財に

昭和初期の建築で、ガラス戸を多用した近代公衆浴場の典型例「公衆温泉新温泉」(熊本県人吉市)など22都道府県の建造物109件を登録有形文化財にすることも求めた。

このほかの重文の指定答申は以下の通り。
【絵画】
▽絹本著色地蔵十王像(大阪・阪急文化財団)
▽絹本著色雪舟等楊とうよう像(山口・常栄寺)
▽築地明石町・新富町・浜町河岸(国立美術館)
▽紙本墨画鳥獣人物戯画丁巻断簡(滋賀・秀明文化財団)
▽紙本著色地獄草紙断簡(京都・神慈秀明会)
▽紙本墨画鳥獣人物戯画甲巻断簡(同)
▽絹本著色惟松いしょう円融像(山口・常栄寺)
▽絹本著色雪舟等楊像(個人所有)
【彫刻】
▽木造日光月光菩薩ぼさつ立像、木造十二神将立像(愛知・瀧山たきさん寺)
▽木造阿弥陀あみだ如来立像(京都・上徳寺)
▽木造阿弥陀如来及両脇侍きょうじ立像(京都・聞名寺)
▽木造十一面観音立像(京都・乙訓寺)
▽木造不動明王立像(京都・観音寺)
▽木造神像(奈良・丹生川上神社)
【工芸品】
▽銅色絵蘭陵王らんりょうおう置物(宮内庁三の丸尚蔵館)
▽金銅密教法具(千葉・小網寺)
▽楼閣人物螺鈿らでん食籠じきろう(東京・永青文庫)
黒韋威くろかわおどし肩取腹巻(東京・根津美術館)
【書跡・典籍】
▽宋版唐人絶句(国所有)
▽承暦二年四月廿八にじゅうはち日内裏歌合(東京・日本書道美術館)
▽大毘盧遮那びるしゃな成仏経疏きょうしょ(京都・仁和寺)
▽宋版律宗三大部ならびに記文(京都・教王護国寺)
▽源氏物語 国冬本(奈良・天理大学)
【古文書】
▽嶋井家文書(福岡市)
▽多賀城跡出土木簡(宮城県)
言継ときつぐ卿記(東京大学)
▽近江国比良庄絵図(滋賀・北比良財産管理会)
三藐さんみゃく院記(京都・陽明文庫)
▽高良大社文書(福岡・高良大社)
銘苅家めかるけ文書(沖縄県)
▽琉球国王朱印状(同)
【考古資料】
▽北海道常呂川河口遺跡墓坑出土品(北見市)
▽青森県櫛引遺跡出土品(八戸市)
▽茨城県風返稲荷山古墳出土品(かすみがうら市)
▽三重県天白遺跡出土品(三重県)
▽京都府神雄寺跡出土品(木津川市)
▽広島県安芸国分寺跡土坑出土品(東広島市)
▽徳島県若杉山辰砂しんしゃ採掘遺跡出土石器(徳島県)
▽福岡県大宰府跡出土品(福岡県)
【歴史資料】
▽大槻家関係資料(岩手県一関市)
▽五馬力誘導電動機(日立製作所)
▽星学手簡(自然科学研究機構)
▽横山松三郎関係資料(個人所有)
▽国友一貫斎関係資料(同)
▽上江洲家関係資料(同)

(2022年11月19日付 読売新聞朝刊より)

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