今年は聖徳太子1400年御遠忌の年である。聖徳太子はいうまでもなく、日本仏教界において宗派を超え大きな存在であり続けたスーパースターだ。その聖徳太子の忌日は2月22日。十数年前、西暦ながら2022年に没後1400年、21年に1400年御遠忌が到来することを知ったときは不思議な縁に驚いたが、ついに私たちはその年を迎えた。
奈良国立博物館ではこの節目の年にあわせ、今春に特別展「聖徳太子と法隆寺」の開催を準備している(4月27日~6月20日)。ぜひ楽しみにしていただきたいが、忌日を前に当館の名品展でも、2月14日まで聖徳太子信仰に関わる絵画を特集している。
重要な作品ばかりが展示されているが、なかでもご注目いただきたいのは、橘寺所蔵の「聖徳太子絵伝」全8幅(重要文化財)がすべて展示されていることである。8幅が一堂に展示される機会はおよそ20年ぶりとなる。
明日香村の橘寺は、太子誕生の地、太子が勝鬘経について講じた地と伝わる、聖徳太子ゆかりの寺院。画風から、室町時代頃に奈良で活躍した絵師、琳賢の周辺で描かれたと考えられる。南都絵所と呼ばれる奈良の絵師たちの絵画は、色遣いが明瞭で見やすく、第1幅は上から下へ、第2幅は下から上へというように順序立てられた構成も分かりやすい。
この8幅は、毎年春と秋に2幅ずつ、順に橘寺で公開されているが、昨年は新型コロナウイルスの影響でお寺での公開も中止を余儀なくされた。御遠忌の今年、まずは絵伝から聖徳太子の伝記をより深く知るとともに、太子信仰を支えた人々の思いを感じていただければと思う。
(奈良国立博物館学芸部主任研究員 北澤菜月)
(1月26日読売新聞奈良県版より掲載)
特別展「聖徳太子と法隆寺」 公式サイトで見どころなどを紹介しています!
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/horyuji2021/