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2022.2.25

特別展「最澄と天台宗のすべて」より<2>念仏行勧め極楽説く…国宝「六道絵(黒縄地獄)」(滋賀・聖衆来迎寺蔵)

国宝「六道絵(黒縄地獄)」(部分) 滋賀・聖衆来迎寺蔵
※九州国立博物館で2月27日まで展示

仏教において、あらゆる生き物は6種類の世界(六道ろくどう)を輪廻りんね転生すると信じられてきました。そのうちの一つが人間の生きる世界、人道にんどうです。このほかに天、阿修羅あしゅら、畜生、餓鬼、地獄の各道があります。

平安時代、六道や阿弥陀あみだの極楽浄土をつぶさに述べ、人々に念仏行を勧めて極楽を目指すように説いたのが天台僧の源信でした。平安貴族の必読書となった彼の著作「往生要集」(985年)では、とりわけ8種類ある地獄を活写します。

往生要集を忠実に絵画化した滋賀・聖衆来迎寺の「六道絵」は、迫真的な描写で知られる鎌倉時代の名品です。全15幅のうち真骨頂といえるのが地獄を描いた4幅で、下着だけを身に着け、やせ細った罪人たちが鬼からさまざまな責め苦を受けています。

目を覆いたくなるような凄惨せいさんな描写に人々は震え上がり、念仏による阿弥陀の救いを切実に求めたにちがいありません。

(九州国立博物館文化財課資料登録室長・森實久美子)

特別展「最澄と天台宗のすべて」(読売新聞社など主催)は、太宰府市石坂の九州国立博物館で3月21日まで開催中(期間中、一部で展示替えがある)。問い合わせはハローダイヤル(050・5542・8600)へ。

国宝「六道絵(閻魔王庁)」 滋賀・聖衆来迎寺蔵 画像提供:奈良国立博物館(撮影・佐々木香輔)
※九州国立博物館で3月21日まで展示

国宝「六道絵」のうち「衆合地獄」幅は京都国立博物館で4月12日~5日1日、「阿鼻地獄」幅は5月3日~22日に展示予定です。出品リストやチケット情報は公式サイトでチェックしてください! https://tsumugu.yomiuri.co.jp/saicho2021-2022/

もっと知りたい「最澄と天台宗のすべて」

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