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2023.8.2

【美をたどる 皇室と岡山・下】様々な技法 絢爛豪華(岡山県立美術館副管理者学芸課長・福冨幸)

皇室ゆかりの美術工芸品から、各時代、分野の名品をそろえた特別展「美をたどる 皇室と岡山~三の丸尚蔵館収蔵品より」が、〔岡山〕県立美術館(岡山市北区天神町)で開かれている。見どころを3回にわたり紹介する。

「塩瀬友禅に刺繍海棠に孔雀図掛幅」
宮内庁三の丸尚蔵館収蔵
※8月8~27日展示

塩瀬友禅しおぜゆうぜん刺繍海棠ししゅうかいどう孔雀図くじゃくず掛幅かけふく

西村總左衛門(12代)
明治14年(1881年)

明治期に活躍した京友禅の老舗「千總ちそう」の十二代西村總左衛門そうざえもんは、西洋の技術や化学染料を取り入れ、友禅染の改良を図った。また意匠を刷新するため、日本画家たちに図案を依頼し、絵画的で大型の美術染織作品を制作。国内外の博覧会に出品し高い評価を得た。

本作は第2回内国勧業博覧会に出品されたもので、江戸時代後期、京都で活躍した岸駒がんくが描いた「孔雀図」をもとに、海棠の花咲く水辺の岩に憩うあでやかな雌雄の孔雀を中心に、かささぎすずめなどの小禽しょうきんをさまざまな友禅染技法を駆使して表現する。さらに孔雀の羽や花のしべ、小禽の目や蜜蜂に刺繍を施した。周囲の表具も、友禅染に刺繍を施すなど絢爛けんらん豪華に仕上げている。

(〔岡山〕 県立美術館副管理者学芸課長 福冨幸 )


〔2023年〕8月27日まで。県立美術館(086・225・4800)。

(2023年8月1日付 読売新聞朝刊より)

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