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2019.8.14

【重要文化財 束熨斗文様振袖】金の熨斗、華やかな意匠

重要文化財 束熨斗文様振袖 友禅史会蔵

金のひもで束ねられた色とりどりの熨斗のしが、ゆるやかに弧を描きながら肩から全体に広がる、華やかで堂々とした意匠の振り袖である。おそらく富裕な町人が婚礼衣裳としてあつらえたもので、嫁ぎ先に熨斗を付けて娘を送り出すという、洒落しゃれた趣向なのだろう。

絞り染めで紅の地色と熨斗部分を染め分け、熨斗の一筋一筋に、友禅染・型染め・刺繡・ 摺箔すりはくといったとりどりの技法を駆使して、鳳凰ほうおう・松竹梅・菊・宝尽くしなど、各種の吉祥文様が詰められている。きものの製作は、扱う工程による分業で成り立っているので、この振り袖も多くの工房の手を経て完成されたことだろう。

きものを中心に扱う古美術商で、自身も染織品のコレクターであった野村正治郎の旧蔵品である。売却依頼を断ったにもかかわらず、この振り袖があまりにも気に入ったので京都への贈り物にするとして、高額の小切手を郵送してきたアメリカの大富豪・ロックフェラー2世の粋な計らいに応え、野村から友禅染を扱う業界団体であった友禅史会へ寄贈された。

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束熨斗文様振袖の解説PDF
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