金属は、元々自然の懐に抱かれていて、金銀や銅などの素材として姿を現わします。そこから手の延長である道具を用いて、対話が始まるのです。まずは銀の平らな板に鏨で彫り、何種類かの四分一(銀と銅の合金)によって細やかな線の模様を描きます。成形の工程の中、金槌で打ち絞り器形が生まれていくに従って、模様も変化し成長していきました。素材と技術、器形と模様の関係を模索して、新しい表現を求めた作品です。
前田 宏智(1961- ) Maeda Hirotomi
石川県生まれ。1986年金沢美術工芸大学大学院修了。伝統工芸を主体に活動し、日本伝統工芸展で1994年及び2006年優秀賞、2007年奨励賞、2018年日本工芸会総裁賞と受賞を重ねた。また伝統工芸金工展や佐藤基金淡水翁賞、北京・当代国際金属芸術展(中国・北京)でも受賞し活躍している。銀や銀と銅の合金である四分一、銀器に金彩を打出す制作を主にして、端麗な造形を生み出している。東京都江東区在住。
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