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2020.9.6

【作家が語る】今泉今右衛門―工藝2020出展作品から

色絵雪花薄墨墨いろえせっかうすずみすみはじき雪松文蓋付瓶ゆきまつもんふたつきびん
今泉 今右衛門 2019年 W・D・H:37.6・36.3・62.5cm (個人蔵)【陶磁】

最近、陶芸の制作の中で実感することは、この仕事は自然や人の繋がりの恩恵の中でできていることではないかと。有田の磁器の原料になる磁石は、その石単味で磁器が焼成できるという、世界でも稀な特殊な原料です。また、今右衛門の釉薬の肌合いの雰囲気、釉調は、自然の薪による焼成が作りだす世界であり、その釉薬、窯焚きの技術・調合は、先人の職人の仕事の積み重ねにより生まれるものです。日本の工芸というものは、造り手の心の発露そのものだけではなく、自然や人との関わりの中で生まれる価値観の大切さがあるのではないかと思われます。この作品は、江戸期から伝わる白抜きの「墨はじき」技法に、白の微妙な「雪花墨はじき」、不思議な輝き「プラチナ彩」を取り入れ、堂々と松に降り積もった雪を表現しました。

今泉今右衛門(1962- )Imaizumi Imaemon
佐賀県生まれ。1985年武蔵野美術大学工業デザイン学科卒業。前衛陶芸の鈴木治に師事した後、父・十三代今右衛門のもとで修業した。伝統工芸を主体に活動し、日本伝統工芸展で1998年及び2004年に優秀賞を受賞、また日本陶芸展や西日本陶芸美術展等でも活躍した。2008年MOA岡田茂吉賞工芸部門優秀賞、2011年日本陶磁協会賞受賞。2002年十四代今右衛門襲名。家伝の色鍋島色絵磁器を基調に薄墨墨はじきやプラチナ彩色などの技法を効果的に応用して、現代的な感性を発揮した意匠構成の造形表現を獲得した。2014年国の重要無形文化財「色絵磁器」保持者認定。《色絵雪花薄墨墨はじき雪松文蓋付瓶》は、雪の結晶の薄墨墨はじきを背景に、堂々と描かれた常緑の黒松に純白の雪が降り積もり、荘厳で清澄感が溢れている。佐賀県有田町在住。

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「工藝2020」開催概要や日時指定チケットの情報は公式サイトで

https://tsumugu.yomiuri.co.jp/kogei2020/

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