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2026.6.10

【技を継ぐ あをによし賞20年】(3)瓦葺きと製造 - 一手に担う 職人養成へ有志で保存会

笑顔を見せる社長の山本健二さん(右)と、装飾性の高い獅子瓦を持つ工場長の山本正道さん(奈良県平群町で)=大塚直樹撮影

奈良県平群へぐり町の竜田川沿いにある工場で5月中旬、若手の職人ら10人ほどが、乾燥中の瓦の形を整えたり、木の板をノコギリで切って型を取ったり、作業を進めていた。頼もしそうに見守るのは、山本瓦工業社長の山本健二さん(64)。「職人を囲っておかないと文化財は維持できない。若い子たちがうちで学んで育ってくれたら、(未来へ技術を伝承する)指導者になってくれるからね」と語る。

山本さんの父は、第9回読売あをによし賞の本賞を受賞した清一きよかずさん(2018年死去)。き職人だった1963年に会社を設立した。県内の職人を集めて7年後に工場を建て、分業が当たり前だった製造と瓦葺きを一手に担う仕組みを作った。学究肌で古代瓦の研究・復元にも情熱を注いだという。

山本清一さん(2015年撮影)

山本さんは、小さい頃から清一さんに連れられ、奈良の東大寺や法隆寺の修復現場を見て育った。瓦は、6世紀末に朝鮮半島から伝わり、長い歴史をもつ。「1400年以上前のものが残っているのは、それだけ価値があるからや」。そんな父の口癖を聞きながら、当たり前のように瓦葺きの世界に入った。

かつては「職人の技術は見て盗むもの」とされたが、そうも言っていられない状況になった。バブル崩壊後、建築コストを抑えるため、瓦葺きの屋根を注文する施主が急減したからだ。危機感を覚えた清一さんは91年、全国の職人を養成するため、有志で日本伝統瓦技術保存会を設立した。

今も続く保存会の重要な役割の一つが、口伝に頼りがちな製造の各工程を文章化し、マニュアルにまとめること。同社で製造の中核を担う工場長の山本正道さん(57)は「現代っ子は弱いと思われがちだが、一つ一つきっちり教えれば、自発的に取り組むようになる」と手応えを語る。

社長の山本健二さんは現在、経営に専念する一方、保存会の副会長を務め、全体を見渡す立場になった。父が業界の衰退を憂慮し、いかに真剣に次代のことを考えていたかを再認識している。

文化財の修復現場で瓦の葺き方を見れば、100年前の職人の技量が手に取るようにわかるという。時代に応じて新しい工法を取り入れながら、100年後に思いをはせる。「先人が作った美しいもんを自分たちが汚くするわけにいかん。その気持ちだけでやってるようなもんです」(辰巳隆博)

「第20回」候補者募集
読売新聞社は「第20回読売あをによし賞」の候補者の応募を受け付けている。文化財の保存、修復の最前線の現場を支える活動「保存・修復」の部と、工芸や芸能などの伝統文化を継承し、発展させる取り組み「継承・発展」の部で選考する。賞金は各200万円。6月19日締め切り(必着)。問い合わせは事務局(06・6366・1857=平日午前10時~午後5時)。結果発表は秋頃を予定している。

(2026年6月7日付 読売新聞朝刊より)

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