
日本の磁器を代表する佐賀県の伊万里・有田焼。同県伊万里市の山あいにある

工房脇の広場に、磁器の原料となる十数トンの陶石が山積みにされていた。自ら採石に出向いた陶石は、硫黄や鉄分などが含まれ、少し黄みがかっている。それを2種類の粉砕機でたたきつぶし、ふるいにかけた後、水中に入れ
「1か月のうち半分は土作りです。機械が買えない頃は全て手作業でやっていて、左肩の筋が切れました」と馬場さんは語る。
磁器を作る際は通常、純白に仕上がり、入手しやすい熊本県天草産の陶石が使われる。磁土や陶土自体、業者から購入する陶芸家が多い中、馬場さんは手作業と地元の原料にこだわる。
「有田町周辺は日本の磁器の発祥地とされる。泉山陶石が見つかったからこそ発展した産業なので、その歴史も継承したい」と理由を明かす。
きっかけは30歳の頃。佐賀県立九州陶磁文化館(有田町)で目にした古伊万里に触発された。「先人が創成期に試行錯誤して、より白い磁器を生み出そうとしていたエネルギーに触れて自分も作りたいと思った」
泉山陶石は粘り気が少なく成形しづらい上に、精製に手間がかかる。それでも妻のあゆみさん(43)と2人で作った作品は、古伊万里をほうふつとさせる風合いがある。わずかに残った鉄分も小さな黒点となる。一般的には不良品として売り物から外されるが、馬場さんは作品の味と捉えている。
同館の鈴田由紀夫館長(73)は「泉山陶石で作られる作品は、現代の効率性や完璧主義とは異なる、古伊万里が持つ本質的な美しさがある。あえて不自由な原料を用いることで、人々に自由な価値観を再認識させる意義がある」と評価する。

馬場さんの染め付けの磁器は、料理を引き立てると評判を呼び、海外からも買い求められている。昨年からは、赤や緑の上絵付けにも挑戦している。「陶石は自然の恵みで、純粋なもの。これからも余すことなく使いたい」と話す。(西部文化部 井上裕介、写真も)
(2026年3月25日付 読売新聞朝刊より)
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