太平洋戦争末期の沖縄戦で所在不明になり、昨年〔2024年〕3月に米国から沖縄県に返還された琉球国王の肖像画「
御後絵は、歴代の琉球国王が亡くなった際に描かれた肖像画で、戦禍で全て所在が分からなくなっていた。ほかの琉球国王・尚家関係資料は国宝に指定されており、国王の権威を直接的に示す御後絵は、第一級の資料となる。
今回返還されたのは4枚分の御後絵。うち2枚については、染織家で沖縄文化研究者の鎌倉芳太郎が1925年に撮影したモノクロ写真が残っており、18世紀前半に在位した、第二尚氏王統13代
いずれも損傷や顔料の
報告によると、御後絵には中国製の唐紙、補強用の裏打ち紙は日本製の美濃紙が使用されていたことが判明した。蛍光X線分析で、国王の帯や香炉を描いた部分に、顔料として金が使われていることも分かった。また、13代尚敬王と、18代尚育王の御後絵を精査し、鎌倉が撮影した写真と細部まで一致していることも確認された。
このほか、別の1枚は4代
検討委委員長の田名真之・前沖縄県立博物館・美術館長(琉球史)は「素材や顔料など、修復に必要な基本情報を得ることができたので、結果を踏まえて修理を進めたい」としている。
御後絵は米マサチューセッツ州の退役軍人の住居の屋根裏にあった。退役軍人は太平洋戦域には従軍しておらず、入手の経緯は分かっていない。沖縄県は2001年、米連邦捜査局(FBI)の盗難美術品ファイルに、御後絵など所在不明の美術品を登録していた。退役軍人の死後、家族がファイルを見てFBIに相談したことで返還につながった。
(2025年3月2日付 読売新聞朝刊より)
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