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2024.10.10

【修理リポート】重要文化財「八相涅槃はっそうねはん図」(福井・つるぎ神社)— 欠失など損傷確認 5年かけ修理

「八相涅槃図」の損傷状況について担当技師(右側2人)から説明を聞く劔神社関係者

今年度〔2024年度〕から5年計画で修理が始まったつるぎ神社(福井県越前町)所蔵の重要文化財「八相涅槃はっそうねはん図」について、所蔵者、寄託先の奈良国立博物館、文化庁、福井県、越前町の担当者らが〔2024年〕9月3日、同館文化財保存修理所(奈良市登大路町)に集まり、今後の修理方針を確認した。

八相涅槃図は縦約210センチ、横約280センチ。鎌倉時代の制作とみられている。横たわる釈迦の姿を中央に、悲嘆に暮れる弟子や動物を周囲に描いた。さらに、画面両脇に設けた縦長の区画に、釈迦の誕生や出家、初めての説法など「八相」と呼ばれる出来事を描いた。

劔神社の境内にはかつて織田寺という寺院があり、本作はその本堂に掛けられていたとみられている。1949年に奈良国立博物館に寄託された後も、大規模な仏教美術の展覧会にたびたび出品され、八相涅槃図の優品として知られてきた。しかし現状は傷みが激しく、公開を大幅に制限せざるを得ない状況という。

この日は修理を担当する会社「文化財保存」(奈良市高畑町)の技師が本作を掲示し、強い折れや欠失、顔料の剥落はくらくなど損傷部分を指摘。2026年5月頃まで、欠失部分に表側から絹を補う方針を示した。

劔神社の田中紘範禰宜ねぎ(45)は「多くの皆さんのお陰で本格的な修理ができることになり、感謝の気持ちでいっぱいだ」と語った。

(2024年10月6日付 読売新聞朝刊より)

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