文化庁、宮内庁、読売新聞社による「紡ぐプロジェクト」の2024年度修理助成事業の対象に選ばれた奈良・興福寺(奈良市登大路町)の国宝「
興福寺北円堂の本尊・弥勒仏坐像は、両脇に立つ無著
像高約141センチ、カツラ材を用いた寄せ木造り。像の表面に漆を塗って、その上に
1983年に本体の修理を行ってから約40年が経過し、像表面の仕上げ層の劣化が進んでいることがわかった。特に本体背面の漆箔層の浮き上がりを止め、台座の虫食いや損傷部分の材質強化が急がれる。
今回の搬出に先立ち、13日には、修理を担当する美術院(京都市下京区)の技師らが像の応急処置を行った。輸送中に漆箔層が剥がれ落ちるのを防ぐため、漆箔の浮き上がりが著しい背面の数か所に、紙を貼った。19日には像を本体、台座、光背に分け、それぞれ薄葉紙などで丁寧に包み、担架に取り付けて輸送車に運び入れていた。
修理は年度内の完了を目指す。興福寺は毎年春と秋に特別公開を行い、多くの参拝客を集めているが、今秋の公開は中止を決めた。修理後は2025年に東京都内で展示する予定だ。
興福寺国宝館学芸員で境内管理室次長の多川文彦さん(46)は「われわれは文化財をずっと残していく使命を持っている。今回の修理は、本体が約40年ぶり、台座と光背は約90年ぶりとなる。よりよい修理をしていただき、ご本尊が無事に北円堂に戻ってくることを期待している」と話した。
(2024年7月7日付 読売新聞朝刊より)
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