〔2024年4月〕16日から始まる特別展「法然と極楽浄土」に、仏画の名作、国宝「阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)」が85年ぶりの修理を終えて出品される。修理作業は、最新の技術を駆使した事前の調査で得たデータが大きく貢献した。文化財の修理は、保存、維持とともに新たなデータを得て次世代につなぐためにも欠かせない。重要文化財の西光寺蔵「地蔵菩薩立像」、浄土宗蔵「阿弥陀如来立像」の像内からは由緒がうかがえる大量の史料がみつかり、當麻寺の国宝「綴織當麻曼陀羅」は織りの分析が復元の手がかりとなった。特別展の出品作品から修理の過程で明らかになった事例を紹介する。
特別展は、10月に京都国立博物館、来年〔2025年〕10月に九州国立博物館に巡回。東京国立博物館の展示期間は写真説明に◎で示した。
高さ約98センチ、ヒノキ材の寄せ木造り。切れ長で目尻がつり上がる理知的な顔が快慶の作風を踏襲しているという。
1979年の解体修理で像内にあった大量の納入品を調査したところ、1212年(建暦2年)12月24日の「造立願文」から、浄土宗の宗祖・法然の一周忌に際して弟子の源智(1183~1238年)が全国に呼びかけて造ったとわかった。阿弥陀如来と縁を結んだ人々の名前を書いた文書「結縁交名」には、源頼朝ら4万6000人の名を確認した。
1753年(宝暦3年)の修理では、本像の台座の銘文から、かつて堺市の堺稲荷宝祥院にあったとわかっている。その後の経緯は不明だが、滋賀県甲賀市の高野山真言宗・玉桂寺に伝わり、浄土宗が「宗派草創期の仏像で重要」として同寺と交渉、宗派の垣根を越えて2010年に浄土宗に戻り、話題となった。11年12月に京都国立博物館に寄託した。
今回の特別展は、本像をはじめ「源智阿弥陀如来造立願文」、「源頼朝等交名」を3会場で展示する。
(2024年4月7日付 読売新聞朝刊より)
0%