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2022.8.19

沖縄復帰50年記念特別展「琉球」(九州会場)より<1>世界つなぐ気概を刻んだ梵鐘…重要文化財「銅鐘 旧首里城正殿鐘(万国津梁の鐘)」

重要文化財「銅鐘 旧首里城正殿鐘(万国津梁(しんりょう)の鐘)」
第一尚氏時代・天順2年(1458年) 沖縄県立博物館・美術館蔵

三山(山北・中山・山南)に分かれていた琉球の統一を成し遂げた第一尚氏六代のしょう泰久たいきゅうは、仏教にあつく帰依したことで知られる。泰久の時代、首里や那覇には多くの禅宗寺院が建立され、各寺院には王府主導で鋳造された梵鐘ぼんしょうが納められた。

一連の梵鐘制作は、仏教によって国を守ろうとする、鎮護国家思想の反映と考えられる。琉球随一ともいうべきこの鐘の制作には、王府の要請に当時南方との交易を積極的に推進していた周防の守護大名大内氏が関与し、当地を訪れた豊前(現・北九州市)の小倉鋳物師による「出吹でぶき」と呼ばれる出張現地制作が行われたとみられる。

鐘身しょうしんには相国寺の渓隠けいいん安潜あんせんによる撰文せんぶんが刻まれ、特に書き出しの一文は、自らを蓬莱島ほうらいとうになぞらえた琉球が世界の架け橋(=万国ばんこく津梁しんりょう)にならんとする気概を見事に表したものとなっている。

(九州国立博物館企画課主任研究員・望月規史)

沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」(読売新聞社など主催)は、太宰府市石坂の九州国立博物館で9月4日まで開催中。問い合わせはハローダイヤル(050・5542・8600)へ。

出品リストやチケット情報は公式サイトでチェック! https://tsumugu.yomiuri.co.jp/ryukyu2022/

もっと知りたい 特別展「琉球」

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