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2021.12.14

【修理リポート】京都・随心院の秘仏 慎重に梱包され修理所へ

移動に備えて木造如意輪観音坐像に養生用の紙を貼る修理技術者(京都市山科区の随心院で)=河村道浩撮影

紡ぐプロジェクトによる2021年度修理助成事業対象の国宝、重要文化財がそれぞれ所蔵元から運び出されました。傷みの状態を確認して、修理作業が進められています。運び出しや、修理の方針を決める話し合いの様子などをリポートします。

真言宗善通寺派大本山・随心院(京都市山科区)で5月21日、所蔵する重要文化財の坐像ざぞう3体のうち、本尊の「木造如意輪にょいりん観音かんのん観音坐像」が、修理のため京都国立博物館内の文化財保存修理所に運ばれた。

年2回、一般公開してきたが、それ以外は本堂の厨子ずしに安置される秘仏。伸びやかな手足を均衡良く配し、引き締まった口元の表現などから、運慶らが属した慶派の仏師が鎌倉時代に制作したと考えられている。

詳しい劣化の状態はわかっていなかったが、2020年9月の重文指定のために行われた本格調査で、漆地に金箔きんぱくを貼った「漆箔しっぱく」の剥離はくりなどが予想以上に進んでいることが判明した。京都市文化財保護課の担当者は「お顔の一部も目立って浮き上がるなど、一刻も早い修理が望まれた」と語る。

今回は表面全体の剥落止めに取り組む予定で、腕などの接合状態を点検する作業を含め、1年がかりでの本格修理を想定している。

公益財団法人美術院(京都市下京区)の門脇豊・研究部長(52)ら技術者4人が搬入前日から準備作業に着手。漆箔が浮き上がった部分などに養生用の紙を丁寧に貼り、当日は像を保護する薄葉紙で慎重に覆って梱包こんぽうし、車で移動させた。門脇部長は「台座や光背も含めて、今後の安置に耐えられるよう、しっかりと修理を進めたい」と力を込めた。

随心院では22年度に「木造阿弥陀あみだ如来にょらい坐像」、23年度に「木造金剛こんごう薩タさった坐像」の修理を予定。29年は後堀河天皇から門跡の宣旨を受けて800年の節目となる。中本義久・寺務長(63)は「記念の年に向けた素晴らしいスタートになる」と期待を寄せる。

(2021年8月22日付読売新聞朝刊より)

厨子から慎重に下ろされる木像如意輪観音坐像
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