日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2023.6.9

【修理リポート】重要文化財「八瀬童子関係資料」(京都・八瀬童子会蔵) 材料の紙調査、補修紙選定 

「紡ぐプロジェクト」23年度修理助成 貴重な宝 後世に

今年度〔2023年度〕の「紡ぐプロジェクト」助成対象となった重要文化財3件の修理が始まった。剥落はくらくのおそれや虫食いなどの劣化を食い止めるため、数年にわたって慎重に作業を進める予定だ。

虫食いなどによる損傷を確認

重要文化財「八瀬童子やせどうじ関係資料」(八瀬童子会蔵)は〔2023年〕5月、修理のため京都国立博物館の文化財保存修理所に搬入された。

比叡山の麓の集落で暮らす「八瀬童子」は延暦寺に対して税を納め、実務労働を負担した。一方、南北朝動乱で後醍醐天皇が延暦寺に逃避する際にも協力したとされるなど、朝廷とも深い関係を持ち、税の免除などの特権が与えられた。関係資料は、こうした歴史を伝える古文書や装束類で、2010年に重要文化財に指定された。

寄託先の京都市歴史資料館(同市上京区)で、文化庁の担当者、修理を手がける「修美」が、税の免除などを伝える歴代の天皇の命令を記した文書・綸旨りんじや京都所司代の下知状など43点の状態を確認。京都国立博物館内の修美の工房に運ばれた。

搬出を待つ「八瀬童子関係資料」

5年間の予定で、材料の紙を1点ずつ調査し、それに合った補修用の紙を用意して修理を進める。市歴史資料館歴史調査員の松中博さんは「いずれも八瀬の歴史を伝える上で欠かせない資料。修理が進められることに感謝している」と話していた。

紡ぐプロジェクトとは

国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。

(2023年6月4日付 読売新聞朝刊より)

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