2024年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成事業は、兵庫県から国宝「聖徳太子及天台高僧像」(一乗寺蔵)、三重県から重要文化財「聖徳太子勝鬘経講讃図(西来寺蔵)、福井県から同「八相涅槃図」(劔神社蔵)が初めて申請されるなど地域的な広がりを見せ、過去最多の9件に決まった。いずれも劣化が進み、特に絵画や文書は折れや染みなどが顕著という。貴重な文化財を後世に伝えるため、素材を調査し修理方法を検討したうえで、1年~数年の作業が始まる。
岩船寺本堂の普賢菩薩像は像高約39センチ、像を乗せる白象は高さ約27センチ、像はクスノキ材の一木造り、白象はヒノキ材を用いている。本尊・阿弥陀如来坐像(重要文化財)の後方にまつられている。表面は彩色仕上げで朱、緑青などが残る。作者は特定できていない。
普賢菩薩像は平安時代、成仏を願う女性の信仰を集めたという。ほっそりとした体つき、彫りが浅い柔和な顔立ちなど、平安後期制作の特徴がみられる。台座の一部、白象、光背は後に補ったようだ。
像の入る厨子は高さ約150センチ。表面に布を貼り、上から黒漆を塗っている。厨子内部の壁に描く曼荼羅から南北朝時代の制作とみられる。墨書銘から1519年(永正16年)に修理し、扉、白象、本像の両手首などをこのとき補修したと推定される。直近の修理は1911年(明治44年)で100年を過ぎている。
昨年、展覧会に出展する際に調べると、像表面の彩色が所々浮き上がり、剥落が進んでいた。厨子も同様の劣化がわかった。
岩佐選考委員長は「これ以上、剥落が進まないように安定した形にすることが急務」と指摘した。修理は2025年度の完了を目指す。
(2024年1月7日付 読売新聞朝刊より)
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