日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2025.10.1

【修理リポート】重要文化財「三千院円融蔵典籍えんゆうぞうてんせき文書類」(京都・三千院蔵)― 全体の20%修理終了

「三千院円融蔵典籍文書類」の一部。表紙の損傷について報告をうける牧内崇光教学課長(右端)ら(京都国立博物館で)

2021年度から5年計画で修理を進めている三千院(京都市左京区)所蔵の重要文化財「三千院円融蔵典籍えんゆうぞうてんせき文書類」について、三千院、文化庁、京都府などの担当者が〔2025年〕7月22日、京都国立博物館文化財保存修理所で今後の方針を話し合う監督会議を開いた。

三千院内の蔵「円融蔵」には歴代天皇の書状や法要の記録、日記類などが数多く保管されている。8371点に及ぶ重文指定文書群のうち、15年に重文追加指定された5350点を対象としている。

会議では修理を担当する「松鶴堂」(同市東山区)の担当者が進捗しんちょく状況を報告。すでに17年度から4年をかけて4工房が共同で修理を行っており、これまでに2212点が修理中または修理済みの状況で、紙の枚数で数えると全体の20%が修理を終えた。

今後の方針として、修理は安全に取り扱える状態を目指すこと、修理後は整理してわかりやすい状態で収納・管理すること、冊子を解体した場合は仕立て前に全紙の撮影を行い、データでの閲覧が可能な状態にすることなどが確認・了承された。今年度までの5年間の修理事業は終了するが、修理は来年度以降も継続する。

三千院の僧侶、牧内崇光教学課長(35)は「文化財は色々な人に見て研究していただいて初めて生きると思っている。たくさんの方が携わってこれだけのことをやっていただき、ありがたい。今後、多くの人の目に触れて研究していただければたいへんうれしく思う」と話していた。

(2025年9月7日付 読売新聞朝刊より)

Share

0%

関連記事