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2025.7.11

【修理リポート】国宝「八大童子立像」(和歌山・金剛峯寺蔵)― 制多伽せいたか童子など3体搬出 剥落止めへ

紡ぐプロジェクト 2025年度修理助成

今回修理の対象となった(左から)指徳、制多伽、矜羯羅、清浄比丘の4体=青山謙太郎撮影

「紡ぐプロジェクト」の2025年度修理助成対象に選ばれた国宝2件、重要文化財3件の修理に向けた取り組みが始まった。それぞれの所蔵元から搬出される様子などをリポートする。

金剛峯寺(和歌山県高野町)の国宝「八大童子立像」のうちの3体が〔2025年〕5月8日、修理のため高野山霊宝館から奈良国立博物館文化財保存修理所(奈良市)へ搬出された。約1年かけて剥落はくらく止めなどを行う。

八大童子立像は、鎌倉時代の仏師・運慶の作と伝えられており、高野山の壇上伽藍がらんに立つ不動堂(国宝)の本尊「不動明王坐像ざぞう(重要文化財)の(眷属けんぞく従者)。不動明王坐像と併せて助成対象となり、今年度は矜羯羅こんがら制多伽せいたか清浄比丘しょうじょうびく指徳しとくの4体を修理し、残る恵光えこう恵喜えき烏倶婆誐うぐばが阿耨達あのくたの4体は来年度に、同坐像は来年度以降に実施する。

この日は高野山の僧侶が作業の無事を祈って読経した後、修理を担当する「美術院」(京都市下京区)の技師2人が比較的傷みの少ない指徳童子立像を館内で修理。残る3体を薄い紙で包むなどして霊宝館から運び出した。

八大童子立像は一部が展覧会などに出品する際、個々に剥落止めなど応急処置を施しているが、本格的な修理は約50年ぶり。

大森照龍館長(64)は「今回修理のために搬出する矜羯羅童子、制多伽童子は八大童子立像の中でも運慶が特に力を入れて制作したと言われる優れた立像。3体がどのようにきれいになってお戻りになるか、今からどきどきしている」と語った。

運搬中の安全を期すため、丁寧に荷造りされる制多伽童子立像
矜羯羅童子立像を慎重に持ち上げる美術院の担当者

(2025年7月6日付 読売新聞朝刊より)

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