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2025.7.11

【修理リポート】国宝「地蔵菩薩立像」(京都・大報恩寺蔵)― 構造部分損傷 台座も虫食い

紡ぐプロジェクト 2025年度修理助成

「紡ぐプロジェクト」の2025年度修理助成対象に選ばれた国宝2件、重要文化財3件の修理に向けた取り組みが始まった。それぞれの所蔵元から搬出される様子などをリポートする。

搬出に先立ち、光背や錫杖しゃくじょうなどを外され、点検を受けた地蔵菩薩立像

大報恩寺(京都市上京区)の国宝「地蔵菩薩立像」が〔2025年〕4月18日、修理のため京都国立博物館文化財保存修理所へ搬出された。

像高約163センチ。針葉樹材を用いた一木割りぎ造り。大報恩寺所蔵の六観音6体とともに、もとは仏堂「北野経王堂」に安置され、江戸時代に堂が解体された際に同寺に移されたことが伝えられている。

六観音は運慶や快慶の流れをくむ慶派仏師の工房で造られたことが知られ、地蔵菩薩立像も同一工房の作とみられる。重要文化財だった六観音6体が2024年に国宝指定を受ける際、未指定だった地蔵菩薩立像も国宝に追加指定された。

しかし六観音とは異なり、長らく未指定で本格的な修理を受けることがなかったため、表面の彩色層の剥落だけでなく、構造部分におよぶ損傷が著しい。台座も虫食いなどが激しく不安定な状態だという。25年度中の修理完了を目指す。

菊入諒如住職(62)は「約800年の間、お地蔵さまの前で多くの人々が手を合わせてきた。これからも人々が未来永劫えいごうにわたって手を合わせられるよう、本格的な修理が行われるのは大きな喜び」と語った。

(2025年7月6日付 読売新聞朝刊より)

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