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2025.7.11

【修理リポート】重要文化財「如意輪観音坐像」(京都・平等寺蔵)― 補修材が変色 目の周辺にくま

紡ぐプロジェクト 2025年度修理助成

「紡ぐプロジェクト」の2025年度修理助成対象に選ばれた国宝2件、重要文化財3件の修理に向けた取り組みが始まった。それぞれの所蔵元から搬出される様子などをリポートする。

収蔵庫から搬出するため、台座から下ろされる如意輪観音坐像

平等寺(京都市下京区)の重要文化財「如意輪観音坐像」が〔2025年〕5月30日、修理のため京都国立博物館文化財保存修理所へ搬出された。

如意輪観音坐像は像高約81センチ。針葉樹材の寄せ木造り。面長な整った顔立ちで、頭髪は丁寧に彫られ、細身の胴部や手足から受ける印象によって女性的な像と感じられるのが特徴。6本の腕の像容を違和感なくまとめた落ち着いた作風から、鎌倉時代の13世紀後半頃の制作と推定される。

ふだんは平等寺境内の文化財収蔵庫に重要文化財の薬師如来立像(平安時代)などとともに保管されている。鎌倉期の如意輪観音像の中でも屈指の美しさを誇る作品とされてきたが、過去の修理時に施された補修材が必要以上の範囲に及んでおり、この部分が時間の経過とともに変色。現在は目の周辺にくまができたようになり、当初の美しさを失いかけている。また虫食いによる傷みが各部で進行。脇手の取り付けに緩みも確認されている。

この日は、修理を担当する美術院の技師らが同寺を訪れ、同像を薄葉紙で包むなどして収蔵庫から慎重に運び出した。

大釜諦順住職(70)は「お像は信仰の対象であるとともに、後世に伝えなくてはならない大切な文化財だ。今回多くの皆さまのおかげで、修理の運びとなった。お像がきれいになって戻ってくるのを期待している」と語った。

(2025年7月6日付 読売新聞朝刊より)

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