紡ぐプロジェクトの助成対象となった、国宝「薬師如来
坐像 」(奈良・新薬師寺蔵)、重要文化財「仏涅槃 図」(岡山・遍明院 蔵)の修理に向けた調査、確認を行った。前回の修理から劣化が進んでいるため、慎重な作業が必要となる。
新薬師寺(奈良市)の国宝「薬師如来坐像」(平安時代前期)は、直近の修理から70年が経過し、傷みの激しい台座を主に修理することとした。
台座は、仏像の衣がかかる装飾が施された「
作業に立ち会った文化庁の井上大樹・文化財調査官は「台座は地面からの湿気を受けやすく、かなり損傷している」と指摘した。
分解した台座は〔2023年〕10月、奈良国立博物館の文化財保存修理所へ移して修理を始めた。2か年計画で行う予定だ。
台座の搬出には、薬師如来坐像の周囲を取り囲む
並行して、薬師如来坐像本体や光背などの修理を本堂で約1か月かけて行った。本体の修理は1903年以来だが、ほこりの付着や、修理箇所の変色などが見られた程度で、台座に比べ良好な状態だった。ほこりを除去し、変色した部分が目立たないよう周囲となじむ色にした。
光背は、
中田定観住職(79)は「ふだん気づかない台座の傷みを修理できて、ありがたい気持ちでいっぱいだ。修理後も参拝者には見えない部分だが、ご本尊を将来に守り伝えるうえでたいへん大きな意義がある」と語った。
紡ぐプロジェクトとは
国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。
(2023年12月3日付 読売新聞朝刊より)
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