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2024.5.10

【修理リポート】重要文化財「山水図ふすま」(京都・隣華院蔵)長谷川等伯筆 ― 所蔵元で「建て込み」実施

「紡ぐプロジェクト」修理助成 作業終了、在るべき所へ

修理を終えた「山水図襖」

「紡ぐプロジェクト」の助成対象として修理を進めていた文化財が、2023年度の作業を終え、次々に所蔵元に戻った。随心院の「金剛薩埵坐像こんごうさったざぞう」や宝積寺の「十一面観音立像」は漆箔しっぱく剥落はくらく止め、西福寺の「蓮池図」は折れの修理などに多くの力を注いだ。

長谷川等伯筆と伝わる重要文化財「山水図ふすま」は20面を6年がかりで修理する計画で、2022年度から第1期分(4年間)の作業を進めている。23年度は「春夏景」4面と裏面の「巨松図」の作業を終えた。

寄託先の京都国立博物館から〔2024年〕3月11日、いったん所蔵元の隣華院(京都市右京区)に戻り、山水図を収めていた襖の枠へ実際にはめ込んで確認する「建て込み」を行った。選定保存技術「表装建具製作」保持者の臼井浩明さんが調整した後、再び同博物館に納めた。

今回の修理は現状維持を基本方針として、以前の修理で使った古い補修紙は、本紙との重なり部分を整えた上でそのまま残した。引き手の金具も以前のものを用いている。

脇坂尚文住職(48)は「久しぶりにきれいになった襖を見て、すがすがしい気持ちになりました」と話した。

(2024年5月5日付 読売新聞朝刊より)

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