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2024.5.10

【修理リポート】重要文化財「十一面観音立像」(京都・宝積寺蔵)― 漆箔の浮き上がり解消

「紡ぐプロジェクト」修理助成 作業終了、在るべき所へ

「紡ぐプロジェクト」の助成対象として修理を進めていた文化財が、2023年度の作業を終え、次々に所蔵元に戻った。随心院の「金剛薩埵坐像こんごうさったざぞう」や宝積寺の「十一面観音立像」は漆箔しっぱく剥落はくらく止め、西福寺の「蓮池図」は折れの修理などに多くの力を注いだ。

厨子の中に安置された「十一面観音立像」

宝積寺ほうしゃくじ(京都府大山崎町)所蔵の重要文化財「十一面観音立像」(鎌倉時代)が修理を終えて〔2024年〕3月29日、京都国立博物館の文化財保存修理所から同寺の本堂に戻った。

十一面観音立像は像内から見つかった墨書などから、多くの人々の寄進によって仏師院範らが1233年(天福元年)に造立したと判明している。

顔、胸、腕、膝など像全体で漆箔の浮き上がりなどが多く確認され、1年をかけて修理を進めてきた。

修理を担当した「美術院国宝修理所」の岩下淳所長は「剥落止めを中心とした修理を行った。表面に付着した白い物質が見つかったが、蛍光X線調査の結果、土由来のものとわかり除去した」と語った。

寺石亮尚住職(36)は「ご本尊の十一面観音立像と光背や台座の漆箔の浮き上がりまで修理していただき、ありがたい限りだ。きれいになったご本尊を、しっかりとお守りし、将来に伝えたい」とした。

(2024年5月5日付 読売新聞朝刊より)

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