日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2023.6.7

【修理リポート】重要文化財「十一面観音立像」(京都・宝積寺蔵) 尊像、光背、台座 梱包し搬出

「紡ぐプロジェクト」23年度修理助成 貴重な宝 後世に

今年度〔2023年度〕の「紡ぐプロジェクト」助成対象となった重要文化財3件の修理が始まった。剥落はくらくのおそれや虫食いなどの劣化を食い止めるため、数年にわたって慎重に作業を進める予定だ。

搬出のため飾りを外す=河村道浩撮影

宝積寺ほうしゃくじ(京都府大山崎町)所蔵の重要文化財「十一面観音立像」(鎌倉時代)が修理のため〔2023年〕5月、京都国立博物館(京都市東山区)の文化財保存修理所に向けて運び出された。

内部に納入されていた墨書などから、仏師院範らによって1233年に多くの寄進で造られたことが確認できる貴重な仏像。

修理を担当する「美術院」の堺淳主任技師は「光背や台座を含めて全体として表面の漆箔しっぱく層の浮き上がり、ちりやほこりの付着が目立つ。今回の修理は剥落はくらく止めが大きな仕事になると考えている」と語り、尊像、光背、台座それぞれを薄葉紙うすようしで慎重に梱包こんぽうした後、本堂から運び出した。

厨子から光背を運び出す

寺石亮尚住職(35)は「ご本尊を細かく調べながら、厨子ずしから丁寧に運び出す作業の様子に感動した。大切に扱っていただき、ありがたい気持ちでいっぱいだ。1年後、きれいになって無事に帰ってくるよう願っている」と話していた。

紡ぐプロジェクトとは

国宝や重要文化財、皇室ゆかりの名品、伝統文化、技術などを保存、継承していく官民連携の取り組み。文化庁、宮内庁、読売新聞社が2018年に開始した。展覧会の収益の一部や、企業からの協賛金などを活用し、文化財の修理を助成し永続的な「保存・修理・公開」のサイクル構築を目指す。これらの文化財の魅力や修理作業の経過に加えて、次世代に伝える伝統芸能、工芸の技術などを、紙面やサイトを通じて国内外へ情報発信している。

(2023年6月4日付 読売新聞朝刊より)

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