文化財修理は多くの「手仕事」によって支えられている。「早来迎」の修理にあたって新調された部材も、京都の職人によって作られた。
「
昔の風合いに近い仕上げにこだわり、絹糸はあえて均一に染めず、色ムラが出るよう草木染を選んだ。
金箔を細く裁断して作る金糸も太さはまちまち。材料集めに携わった織物問屋「鳥居」の担当者は「かつては糸屋、染め屋、金糸屋と分業されていましたが、いまでは金糸を作れる業者も減りました。こうした技がないと、文化財修理が立ちゆかなくなります」と話す。
裂を織ったのは、「廣信織物」(京都市上京区)の廣瀬純一さん(39)。選定保存技術「表具用古代裂<金襴等>製作」の保持者だった父・賢治さんの後を継ぎ、西陣織の技を磨いている。「何十年も残ると思うとやりがいがある」と、昔ながらの機織り機に向かいコツコツと作業を続けた。
軸の先に付けられた金具「軸首」も、新たに作られた。唐草文様が美しい、透かし彫りの特注品だ。
法会などでハスの花びらをかたどった紙などを
制作したのは、選定保存技術「美術工芸品
透かし彫りの内側には銀を敷いた。沖本さんは「銀は年を経ると黒っぽく変色します。100年後に銀の部分だけ取り換えれば、外側の金具はまた再利用してもらえる」とねらいを説明する。未来への思いが込められている。
(2022年5月1日付 読売新聞朝刊より)
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