2025年度の「紡ぐプロジェクト」修理助成事業には、能登半島地震の被災地、石川県から初めて申請があった。重要文化財「不動明王坐像」(法住寺蔵)だ。滋賀県から申請があった重要文化財「石山寺多宝塔柱絵」(石山寺蔵)は、国宝建造物に描かれた絵画を現地の建物内で修理する、紡ぐプロジェクトとしては初の取り組みとなる。貴重な文化財を未来に伝えるため、困難なケースであっても最善の修理方法を検討し、現代の最高水準の技術で作業を進めていく。
近年、発見された仏画で、2024年8月に重要文化財に指定された。中央に釈迦如来、向かって右に白象に乗る普賢、左に獅子に乗る文殊の両菩薩を配する。鎌倉時代前半(13世紀前半)の制作と推定されるが、平安後期の影響を色濃く残す美麗な画趣。補筆や加筆が少ないことから、制作当初の姿をとどめる作品として評価が高い。
細く切った金箔などを貼り付けて描く「截金文様」は、当時の最高技術が用いられている。縦約83センチ、横約39センチで仏画としては小さい画面に緻密に施され、繊細優美な画風に仕上げている。
最大の損傷は絵が描かれた絹「本紙料絹」の欠失で、剥落して画面に穴が開いている。全体に横折れが発生し、亀裂が進行している部分も見受けられる。
修理は2年。絹に直接施された裏打紙「肌裏紙」を取り除き、汚れを除去する。欠失部分には補修用の絹を充てるなどし、現状ではわかりにくい三尊の端正な表現を鑑賞できるようにする。
(2025年1月5日付 読売新聞朝刊より)
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