「奇想の画家」として知られる長沢芦雪(1754~99年)が描いた成就寺(和歌山県串本町)所有の重要文化財「方丈障壁画 長沢芦雪筆」(45面)。このうち壁貼付1面(高さ1・75メートル、幅1・87メートル)が今年度の紡ぐプロジェクトの文化財修理助成事業の対象となり、9月30日に京都国立博物館(京都市)の文化財保存修理所で作業方針が話し合われた。
中国の詩人を題材にした「林和靖図」の一部で、芦雪が現在の和歌山県南部に滞在した際に制作した。左上に鶴、中央部分には背中をかがめて歩く人物が描かれている。
他の44面は成就寺が和歌山県立博物館に寄託したが、方丈の壁に貼り付けられた1面は搬出できずに劣化が進み、亀裂が生じるなど危険な状態となっていた。このため、技術者らがヘラなどを使って慎重にはがし、7月に修理所へ運んだ。
この日は「松鶴堂」(京都市)の担当者らが作業の進捗を報告した。調査の結果、作品の右側に、江戸後期頃の修理で紙が新たに補われていることが判明。文化財の修理では原状が分かるよう後代の補修は除去してから、新たに補修し直すことが多い。しかし、今回の補修紙は、作品の鑑賞・保存上問題ないと判断したため、絵が残る左側と同様に残すこととした。
松鶴堂の森田健介技師長の話「本紙はかなり薄いと思われる。今後の修理では、本紙を傷めないよう慎重に補修紙をめくり、裏打ち紙を除去していきたい」
成就寺の大崎克己住職の話「表面の汚れが取れ、過去の補修跡が鮮明にわかるようになった。できるだけ現在の状態を後世に伝える方向で修理を進めてほしい」
(読売新聞京都総局 辰巳隆博)
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