日本美を守り伝える「紡ぐプロジェクト」公式サイト

2019.8.6

「早来迎」85年ぶりの修理始まる 収蔵庫から修理作業所へ

所蔵する知恩院の僧侶らに、修理技術者が絵の様子を説明した(2019年8月)

文化庁、宮内庁、読売新聞社が官民連携で進める「日本美を守り伝える『紡ぐプロジェクト』―皇室の至宝・国宝プロジェクト―」の修理事業で、最初の対象となる国宝「阿弥陀あみだ二十五菩薩来迎ぼさつらいごう図」(早来迎はやらいごう、14世紀)が4月11日、京都国立博物館(京都市東山区)の修理作業施設に搬入された。修理は1934年以来、85年ぶり。

阿弥陀如来にょらいが諸菩薩と共に往生を願う臨終の念仏者の元へ飛来する様子が、縦1・45メートル、横1・55メートルの大画面に精密に描かれている。その対角線を駆け降りるようなスピード感から「早来迎」と呼ばれる。浄土宗総本山・知恩院(京都市東山区)が所蔵し、同博物館へ寄託している。

この日、同博物館の収蔵庫から運び出された早来迎は、修理作業施設の壁に掛けられ、知恩院の前田昌信執事や修理技術者らが絵の状態を丁寧に確認した。

大原嘉豊よしとよ・同博物館保存修理指導室長は「絵の表面は経年によって変色や横折れが目立つ。絵を裏側から支える肌裏紙を替えることで、描かれた水の青みなどが引き立つと思う」と期待した。

(読売新聞大阪文化部 佐藤行彦)

(2019年4月12日読売新聞朝刊より掲載)

作業ドキュメント(2019年4月11日)

京都国立博物館の収蔵庫から出された早来迎。修理技術者らが慎重に作業所へ運び込む
修理を行う作業所の中で、丁寧に梱包を解く
国宝が収められている箱も立派に作られていた。知恩院の前田執事も手伝ってふたを開ける
「国宝」と書かれた箱の中に収められた早来迎。ふたの裏側には、昭和9年11月に修理が行われたことが記されていた
絵の状況を確かめるために、作業所の壁に早来迎をかける。大きな絵が壁一面に広がる
修理技術者や京都国立博物館の研究員らがペンライトを手に、熱心に絵の状態を確認した

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