2020.4.3

伝統の川祭り、高精細複製で生き生きと キヤノン制作の「津島祭礼図屏風」

「津島祭礼図屏風」の高精細複製品と担当の蒔田さん

大手精密機器メーカーのキヤノンは、自社が展開する「 つづりプロジェクト」で、貴重な文化財の保存・活用を目的に高精細複製品を制作している。その一環としてつくられた大英博物館(ロンドン)所蔵の「津島つしま祭礼図さいれいず屏風びょうぶ」の高精細複製品について話を聞いた。

キヤノンは2007年から、最先端のデジタル技術と伝統工芸の技を融合させた「綴プロジェクト」を推進している。デジタル一眼レフカメラと望遠レンズで絵画を細かく分割撮影し、大判プリンターで解像度の高いデジタルデータを出力することで、オリジナルに限りなく近い高精細複製品を生み出す取り組みだ。特定非営利活動法人・京都文化協会との共同プロジェクトとしてスタートし、これまでに約50件の屏風やふすまなどを複製してきた。

紙や絹などの脆弱ぜいじゃくな素材で作られている日本美術は、展示機会も限られるが、こうして生まれた複製品は広く一般に公開され、文化財の保存・普及に役立てられている。海外に渡った日本の文化財を複製し、国内で多くの人に鑑賞してもらうことも狙いの一つだ。

データ量を4倍に 屋台の金魚までくっきり
津島祭礼図屏風(高精細複製品) 右隻(宵祭の図)

今回、完成した津島祭礼図の主題は、津島神社(愛知県津島市)の祭礼として600年近い伝統を誇り、その盛大さから日本三大川祭りの一つに数えられる「尾張おわり津島つしま天王てんのうまつり」。旧暦の6月14日に天王川で行われる船祭りの情景を生き生きと描いている。江戸時代前期の風俗画としても価値が高いとされる。

津島祭礼図屏風(高精細複製品) 左隻(朝祭の図)

目を見張るのは、その描写の細かさだ。お祭りの屋台では金魚すくいの一匹一匹が、米粒よりも小さいほどの大きさで丁寧に描かれ、瓜売りや麺を打つ人、川を泳ぐ人の姿が目にも楽しい。これらを忠実に再現するため、キヤノンは再現に使う画像の総画素数を従来の約18億画素から約72億画素に高め、を引き伸ばしても細部までくっきりと表現できるようにした。

津島祭礼図屏風(高精細複製品)の一部分(拡大)。細かな描写が印象的だ

「このような絵柄は、『何が映っているのかな』と鑑賞者がぐっと近寄って見る場合が多い。寄って見てもきちんと細部が再現できているかどうかに、もっとも気を配りました」。キヤノンのデジタルプリンティング事業本部で画像技術開発を担当する蒔田まきたたけし上席は、制作の過程を振り返る。「72億画素にしていなければ絶対に出せない表現ができた。思った以上に解像度を上げた効果があった」と手ごたえを口にする。

津島祭礼図の撮影は2017年12月にスタートし、金箔きんぱくの加工や古色を付けるといった加工を施したのち、翌18年5月に完成した。作品は祭船を彩る山車幕や提灯のあでやかな色彩が印象的だが、制作された複製品は朱の赤色、緑青の緑、胡粉ごふんの白といった日本絵画の華やかな色彩をも忠実に再現している。

「より細かく分割撮影を行うとデータ量は4倍になった。複製に必要な位置合わせの作業も増えたが、国宝級の作品を撮影するために与えられたのは、わずか数時間。撮影から色合わせまでを最短時間で行わなければならず、作業効率を上げるのに苦労した」と蒔田さん。高精細複製品があれば、オリジナルを展示による劣化から守り、海外に流出した美術品を国内でも鑑賞できるようになる。

津島天王祭は、毎年7月第4土曜・日曜日にクライマックスを迎える。複製品は津島市と愛西市に寄贈され、さまざまな場所で展示されるなど地域の活性化のために役立てられており、歴史ある文化を今に伝える好例となりそうだ。

キヤノン「綴プロジェクト」のホームページ

https://global.canon/ja/tsuzuri/

キヤノンが制作した津島祭礼図の動画は下記からご覧になれます。

https://www.youtube.com/watch?v=TnSe-LOOjF0

Share

0%

関連記事Related articles

編集部からFrom the Editor

一覧ページへ