茶室や和装、懐石料理に至るまで、日本文化の粋が詰まった茶の湯。中でも
その縮図ともいえるのが、「
表千家の十五代千宗左家元(52)は「わびの心を大切にする千家のお茶にかなう道具を作ってもらっている」と語る。
その一つ、
利休以前、茶の湯で重んじられた道具は、中国から輸入した「唐物」と呼ばれる美術工芸品だった。しかし、わび茶を大成した利休は、自ら竹を切って
その時から約450年続く樂家は、今でもろくろを使わず、手で土をこねる「手づくね」で成形。家の敷地にある小さな2基の炭窯で、黒茶碗と赤茶碗を焼く。「歴代、変わらぬ技法で茶碗と向き合ってきた。令和の時代にわび茶にかなう新たな茶碗を生み出したい」。当主の十六代樂吉左衞門さん(40)は力を込める。
◇ ◇ ◇
何代も家をつなぐのは並大抵のことではない。千家十職では現在、10家のうち2家で当主が修業中か不在。長らく男性だけだった当主も、今や3家で女性が務めている。
漆塗りの道具を手がける
中村さんも母と同じ3姉妹。利休が好んだ「利休形」の
懸念もある。中村家では国産の漆が欠かせないが、日本で使用される9割は中国産。漆
◆正式「茶事」4時間かけ
最も改まった正式な茶の湯のもてなしは「茶事」と呼ばれ、全体で約4時間を要する。一方、「茶会」は菓子と薄茶一服といった略式のスタイルを指すことが多い。
茶事は、亭主が少人数の客を招き、懐石、濃茶 、薄茶の点前 といった流れでもてなす。懐石はあくまで濃茶をおいしく飲むための料理で、酒を伴うこともある。静寂の中で濃茶を練る亭主と客が深く心を通わせ、薄茶では和やかに会話が交わされる。
一期一会の時を共に過ごす茶室には、亭主が季節感や取り合わせに心を砕いた茶道具が配される。
伝統工芸を巡っては、全国的に厳しい状況が続いている。経済産業省の外郭団体・伝統的工芸品産業振興協会によると、国が指定する伝統的工芸品の17年の生産額は約927億円、従事者は約5万8000人で、ともに約40年間で5分の1程度に減少している。
一方、文化庁が20年秋に約220の茶道団体を対象にしたアンケートなどでは、茶道具の継承に対する危機感が浮きぼりになった。茶道人口が先細りしているうえ、コロナ禍で茶事・茶会が減少。簡略化も進み、茶道具を披露する機会が減ったことが大きいという。
調査の分析に関わった同志社大京都と茶文化研究センターの宮武慶之・嘱託研究員(39)は「茶道具の需要が減れば、製作する職人の仕事の継続に大きな影響を与えかねず、技術の継承の上でも切実な問題。茶道具はもてなしの心を託すものであり、親しむ機会を確保することは大切だ」と指摘する。
桃山時代(16世紀)、千利休の創意によって作り出された黒樂茶碗。装飾を排し、胴の部分が
内箱の蓋裏の書き付けによると、表千家六代家元の
(2022年10月3日付 読売新聞朝刊より)
特別展「京に生きる文化 茶の湯」
(京都国立博物館)
公式サイトはこちらから
0%