髙島屋の和菓子バイヤー・畑主税さんが、毎月の行事や旬の素材にちなんだ、とっておきの和菓子を紹介します。12月は「冬至」の
島根県・出雲地方では、柚子の皮を細かく刻んで砂糖で煮詰め、「
彩雲堂の「柚衣」は、小さな柚子がまるごと使われています。まずは果皮だけを残し、内側の果肉の部分を全部くり抜いて蜜に漬けます。そのようにして仕上げた「器」状にした中に、さらしあんとも言うべき、きめ細やかな薄墨色のあん―松江の和菓子屋さんでは多く用いられ、「
お茶請けにはもちろんですが、この香り高い柚子の風味は、お酒にもよく合いそうです。
【柚衣】1個 税込378円
彩雲堂/松江市天神町124
TEL:0852-21-2727
https://netshop.saiundo.co.jp/
※販売期間は11月〜3月末
「ゆべし」という名前のお菓子は全国で親しまれています。しょう油やみそを使った郷土菓子として東北に多く見られるほか、「柚餅子」という漢字をあてて、柚子の香りの高い餅菓子も各地で作り継がれています。
江戸時代・文政12年(1829年)の創業と伝わる新潟の老舗・本間屋の「越後柚餅子」は、竹皮に包まれており、その皮をむくとオレンジ色の本体が姿を見せます。驚くのは、もちもちとした柔らかさ! もち米と砂糖に、生の柚子を加えて練りあげて蒸すのですが、一口いただくと、甘みと共に、柚子の香りが立ち上がります。水飴とゼラチンなどを加え、ひとつひとつ小分けにされた「練り柚餅子」も食べやすく、柚子の香りが楽しめます。
長岡藩主から14代将軍・徳川家茂にも献上されたという銘菓。歴史に思いを馳せながらいただきたい一品です。
【越後柚餅子】蒸し柚餅子 1本 税込700円、練り柚餅子 12個入 税込540円
本間屋/新潟市西蒲区福井1845
TEL:0256-72-3580
https://shop.ng-life.jp/honmaya/
柚子の産地の一つ、大分県の
完成した柚煉はつぼに入れて貯蔵され、銘菓「雪月花」に使われます。もち米で仕上げた丸い種煎餅は、中に挟んだ柚煉とよくなじんでいます。煎餅をよく見ると、表面に「雪月花」の文字が刻まれ、ほのかに色が付けられていることに気づくでしょう。白は雪を、薄い青色は月を、薄いピンクは花を表現してます。
パッケージは、大分ゆかりの日本画家・福田平八郎氏と、彫刻家・朝倉文夫氏が手がけています。他にも、和菓子の包装紙やしおりなどは、有名な芸術家によるものも多いので、味わう前にぜひチェックしてみてください。
【雪月花】6包(12枚)入 税込1242円
橘柚庵古後老舗/大分市千代町3-1-10
TEL:097-532-5733
この季節の楽しみの一つが「柚子
東京・一炉庵の「柚子饅頭」は、京都・丹波のつくね芋を使用し、上用粉と柚子の果皮を加えて作られており、芋の香りの中に、淡く柚子の香りが漂います。徳島県産の柚子を取り寄せ、表皮だけを削って砂糖と混ぜたものを
生地の表面にはデコボコとくぼみがあり、中のこしあんがのぞいているのがなんともリアル。淡い黄色の生地には、ところどころに黄色い柚子の果皮も見えます。毎年12月上旬から冬至までの販売予定です。
【柚子饅頭】1個 税込350円
一炉庵/東京都文京区向丘2-14-9
TEL:03-3823-1365
https://www.wagashi.or.jp/tokyo_link/shop/1110.htm
島根県・江の川のそばに店を構える「富士屋本舗」は、明治35年(1902年)創業。現在は姉妹で切り盛りされており、柚子の収穫や皮むきから、羊羹を作る作業のほとんどは手で行っているそうです。
練り羊羹でありながら、口溶けの良さに驚かされます。さらりとして、あんの粒子がとても細やか。口の中に柚子の香りが広がっていきます。
「祖父の代から安心・安全をモットーに、郷土の味、伝統の味を守っています」と同店の菅多優美子さん。全国菓子大博覧会で金賞を受賞した味を守り継ぐ、とても温かみのある味わいです。
【柚子羊羹】1本 税込800円
富士屋本舗/島根県美郷町浜原385-3
TEL:0855-75-0137
プロフィール
髙島屋和菓子バイヤー
畑主税
1980年生まれ、大阪府出身。2003年に髙島屋に入社し、洋菓子売り場の担当を経て、06年和菓子売り場の担当に。京都の和菓子を作りたてのままで提供したいという思いから、人気店の上生菓子を自ら京都で仕入れ、新幹線で運び、夕方に店頭に並べ話題を集めた。全国1000軒以上を巡り、食べた和菓子は1万種以上。著書に「ニッポン全国 和菓子の食べある記」(誠文堂新光社)。ブログ「和菓子魂!」(http://blog.livedoor.jp/wagashibuyer/) Twitter:@wagashibuyer
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