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2021.10.7

【天台特集 vol.1】最澄の教え 1200年の霊気~比叡山延暦寺、輝き復元へ

大改修が進む根本中堂の大屋根=金沢修撮影

今年は比叡山延暦寺を創建した天台宗祖・最澄(767~822年)の1200年の大遠忌だ。現在、国宝の総本堂「根本中堂」で60年ぶりの大改修が進んでいる。最澄の教えと比叡山の伝統は、中堂の内部を厳かに照らす「不滅の法灯」とともに全国3000を超える寺院に脈々と受け継がれている。

匠の技 文化財受け継ぐ
国宝「聖徳太子及び天台高僧像 十幅のうち最澄」平安時代(11世紀) 兵庫・一乗寺蔵=東京文化財研究所提供 東京で10月12日~11月7日展示、京都で2022年4月12日~5月1日展示予定

伝教大師最澄は、法華経を根本経典とする天台の教えを学ぶため中国・唐にわたった。延暦寺根本中堂の前身となる一乗止観院を比叡山に建立し、以来、天台宗の総本山として信仰を集めた比叡山は、法然・親鸞・日蓮といった各宗派の開祖たちが学び、「日本仏教の母山」としての名声を確立した。

根本中堂は織田信長による比叡山焼き打ちを経て、徳川3代将軍家光の命で1642年に再建した。1955年に「昭和の大改修」が行われ、今回の改修は2016年から25年度末まで10年にわたる大事業だ。

琵琶湖から望む比叡山=比叡山延暦寺提供

正面の幅36.7メートル、奥行23.9メートル、高さ24.3メートルもの規模を誇る根本中堂は現在、無数の銅板が一面に張られた屋根のき替え工事の最中で、銅板を支える下地の木など、修理過程ならではの光景が見られる。

サワラの木を幾重にも重ねて並べる「とち葺き」の工法
「花天井」と呼ばれる中陣の天井絵
蟇股かえるまた彫刻の麒麟きりん。今後、彩色の復元を目指す

重要文化財「根本中堂廻廊かいろう」でも、サワラの木を組み合わせた「とち葺き」の屋根の葺き替えが行われ、長年のススやホコリで変色したり、塗装が剥がれたりした天井絵や彫刻も、科学分析によって往時の色彩の復元を目指している。修理の様子は、見学用に開放されたスペースから体感できる。

「職人のたくみの技により、貴重な文化財が受け継がれていく様子を知ってほしい。特に若い人たちに伝統文化を守る作業に共感してもらえたら」と延暦寺管理部長の小森文道さん。修理には若手の職人も多く参加しているという。

1200年あまり途絶えることなく守り継がれてきた「不滅の法灯」(比叡山延暦寺根本中堂で)=金沢修撮影

根本中堂では、最澄がともし、今なお延暦寺の象徴として受け継がれる「不滅の法灯」が堂内を照らしている。比叡山焼き打ちで法灯も灰燼かいじんに帰したが、中堂の再建時に、立石寺(山形県)に分灯されていた灯明を移して復興された。今も比叡山の僧侶が1日2回油を注ぎ、火を絶やさないよう努めている。

「我々の使命は、伝教大師の志を次世代に受け継ぐこと。根本中堂を修理することも、不滅の法灯の火を守り続けることも、その一環なのです」と小森さん。

横川中堂
横川中堂の本尊 重要文化財「聖観音菩薩立像」平安時代(12世紀) 滋賀・延暦寺蔵 九州、京都で展示

特別展「最澄と天台宗のすべて」では、延暦寺や、その教えを受け継ぐ全国の寺院の国宝・重要文化財が数多く並ぶ。不滅の法灯をLEDライトで再現し、根本中堂の修理の様子を映像で紹介するコーナーも設けられる。小森さんは「展示をご覧になった方がぜひ、延暦寺にも訪れ、伝教大師が創建して以来の1200年の霊気にじかに触れていただけたら」と話している。

(読売新聞文化部 多可政史)

(2021年10月3日読売新聞から)

展覧会公式サイトはこちら

伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」 (yomiuri.co.jp)

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