国立博物館に備えられた修理施設を紹介するシリーズです。文化財を守り継ぐためには、保存環境を適切に管理することも重要です。第2回は、奈良国立博物館の環境管理を紹介します。
2002年に開設された奈良国立博物館文化財保存修理所は、彫刻、絵画・書跡、漆工芸の3団体の工房を持つ。同館保存修理指導室長の荒木
博物館の役割は、作品の展示、保存・修理、そして調査・管理だ。
「適切に修理を行っても、作品が置かれた環境が悪く、適切に管理されなければまたすぐに劣化してしまいます。人間でも手術後の経過観察が大切なのと同じです」(荒木さん)
文化財を劣化させる光や温度・湿度、虫や菌類、さらに地震や火事、水害などもある。奈良博は、展示室や収蔵庫の温度と湿度を常時管理し、防虫状況を2か月ごとにチェックしている。
今年1月には、地震で停電になった場合を想定し、温度と湿度管理の器械を停止させて、展示ケース内の環境がどう変化するか調査を行った。こうしたデータをもとに、文化財により良い環境を整える。
「海外では、文化財保存に関わる職名を『コンサバター』といいます。文化財の保存は文化をつなぐこと。若い人たちにコンサバターの仕事へ関心をもってもらえれば」と荒木さんは願っている。
(2022年2月17日付 読売新聞朝刊より)
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