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2022.3.8

【文化財継承の現場vol.2】保存環境の管理のためデータも蓄積…奈良国立博物館

奈良国立博物館文化財保存修理所内の「美術院」工房。大きな仏像が横たえられている(奈良国立博物館提供)

国立博物館に備えられた修理施設を紹介するシリーズです。文化財を守り継ぐためには、保存環境を適切に管理することも重要です。第2回は、奈良国立博物館の環境管理を紹介します。

停電も想定して環境の変化を調査

2002年に開設された奈良国立博物館文化財保存修理所は、彫刻、絵画・書跡、漆工芸の3団体の工房を持つ。同館保存修理指導室長の荒木臣紀とみのりさんは「工芸作品は様々な素材やテクニックが集まってできている。一つの作品を複数の工房で並行して修理することができ、お互いの技術を学ぶことも多い」と話す。

奈良国立博物館の文化財保存修理所

博物館の役割は、作品の展示、保存・修理、そして調査・管理だ。

「適切に修理を行っても、作品が置かれた環境が悪く、適切に管理されなければまたすぐに劣化してしまいます。人間でも手術後の経過観察が大切なのと同じです」(荒木さん)

文化財を劣化させる光や温度・湿度、虫や菌類、さらに地震や火事、水害などもある。奈良博は、展示室や収蔵庫の温度と湿度を常時管理し、防虫状況を2か月ごとにチェックしている。

展示ケースに湿度を調節する「調湿剤」を設置する荒木さん

今年1月には、地震で停電になった場合を想定し、温度と湿度管理の器械を停止させて、展示ケース内の環境がどう変化するか調査を行った。こうしたデータをもとに、文化財により良い環境を整える。

「海外では、文化財保存に関わる職名を『コンサバター』といいます。文化財の保存は文化をつなぐこと。若い人たちにコンサバターの仕事へ関心をもってもらえれば」と荒木さんは願っている。 

(2022年2月17日付 読売新聞朝刊より)

作業の様子は年11度、ガラス窓越しに一般公開している(奈良国立博物館提供)
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