1000年以上の歴史を経た絵画や仏像などの文化財は、何度も修理を繰り返し、その姿を今に伝えられてきました。その作業を主に担っているのが、国立博物館に備えられた修理施設です。修理の技を磨く技術者と、専門知識を備えた研究員が連携して、文化財を継承する現場を訪ねました。
京都に最初に修理所が作られたのは、伝統産業の基盤があったためだ。紙や絹に描き記された日本の書画は、飾ったり保存したりするために表具師によって表装されてきた。江戸時代までは、新しい絵の表装も古い絵の修理も彼らが行っていた。技術者が切磋琢磨してきたため、京都には技術の蓄積がある。
修理所は所蔵者、修理業者、行政機関のネットワークの要と言える。
京都国立博物館の研究員は、所蔵者、修理業者の技術者、指定文化財なら文化庁や県など行政関係者と連携し、様々な制約の中で今出来る最善の修理を模索する。文化財の何が大事か、修理の際に何を残して何を取り除くか、難しい判断が求められる場面で、研究員の知見が役に立つ。
本当に手間暇をかけてオリジナルの価値を絶対に
京都国立博物館としてのメリットは、修理の際にしか見聞き出来ない情報に触れ、研究を底上げできることだ。発見を盛り込み、新しい視点で歴史を分析していかなければ、博物館の展示は枯れてしまう。文化財への理解を深めてもらえるよう充実した展示をするためにも、修理は必要だ。
(2022年2月17日付 読売新聞朝刊より)
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