宮内庁三の丸尚蔵館は、皇居東御苑(東京都千代田区)で建て替えを進めている。この間、収蔵品を各地の博物館、美術館で2021年度から展示している。23年度は、秋田県立近代美術館が7月8日から開幕、岡山県立美術館(7月15日~8月27日)、茨城県陶芸美術館(9月16日~12月10日)、石川県立美術館・国立工芸館(10月14日~11月26日)でも展覧会を開催する予定だ。各展の注目作を三の丸尚蔵館研究官による寄稿で紹介する。
掛け軸や
一月と二月のように隣り合う2図で1組にみえる構図は、もとは屏風に貼りこんで仕立てられた押絵貼屏風であったためで、2か月分だけを広げても使用が可能だったのだろう。
ただし、掛け軸となった現状では、中央の五月から八月の4幅で、本紙周りの表具が他の8幅とは文様が異なり、丈も長い。明治43年(1910年)に宮内省が明治宮殿の装飾用品として個人から買い上げた時点で現在の形になっており、それ以前に何らかの事情でこのように仕立てられたのだが、詳細は不明である。
なお、皇室にもたらされた古美術の名品は、京都御所から引き継がれたものだけでなく、明治時代の献上や買い上げによるものも多く、本作もその一例だ。
今回、秋田県立近代美術館で紹介するのは、この五月から八月までの4幅で、それぞれ余白を十分にとり、墨に緑青をにじませる落ち着いた色合いで葉や茎を、あるいは墨で鳥を描く。色数が少ないながらも華やかな印象の色味で、
姫路藩主酒井家で江戸の藩邸に生まれ、37歳で出家して自由に絵筆を
紹介する4幅は、初夏から初秋にかけての風物をとおして、軽やかで
(宮内庁三の丸尚蔵館学芸室主任研究官 清水緑)
◇皇室の名宝と秋田 ~三の丸尚蔵館 収蔵品展~
【会期】7月8日(土)~9月3日(日)
【会場】秋田県立近代美術館(秋田県横手市)
【主催】皇室の名宝と秋田実行委員会(秋田県立近代美術館・ABS秋田放送)、宮内庁
【共催】秋田魁新報社
【特別協力】文化庁、紡ぐプロジェクト、読売新聞社
【問い合わせ】0182・33・8855
(2023年7月2日付 読売新聞朝刊より)
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