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2023.5.23

京都・仁和寺で「伝統工芸の日」…門跡と友禅作家が対談、文化財・職人技を伝える役目について意見交換

世界遺産・仁和寺(京都市右京区)で20日、伝統工芸の普及を図る催し「伝統工芸の日」(仁和寺、読売新聞社主催)が開かれ、瀬川大秀門跡(75)と友禅作家で人間国宝の森口邦彦さん(82)が「伝統文化継承の課題」をテーマに対談した。

対談する瀬川門跡(右奥)と森口さん(京都市右京区の仁和寺で)=青山謙太郎撮影

対談会場の宸殿しんでんでは約50人が観覧。冒頭、瀬川門跡が「888年の創建以来、仁和寺には密教寺院と御所文化の融合で花開いた文化や芸術を愛し、お守りしてきた歴史がある。今も数多くの国宝や寺宝、未整理の古文書があり、後世に伝えていく懸け橋としての大きな役目がある」と述べた。

フランスに留学経験がある森口さんは、フランスでは文化財保護の意識が高く、企業の支援も手厚いことを紹介。日本でも文化継承のため、墨汁ではなく、伝統産業の墨や筆、すずりを使った書道を全ての学校で実施するべきだと提案した。

これに対し、瀬川門跡は賛意を示した上で「法衣や仏具の制作は代々続く職人の力。こうした技術や芸術を伝えることも大切」と述べ、伝統文化を継承していくことの重要性を説いた。

対談では、文化庁の京都移転も話題となり、「文化庁をお客さま扱いせず、一緒に文化財をしっかりと守る方策を考える」(森口さん)、「伝承に大きなプラスとなる。一歩ずつ前進していきたい」(瀬川門跡)と期待した。

御殿の白書院に陶芸作品が並ぶ

この日は、同じ御殿にある白書院で、日本工芸会正会員の陶芸作家による作品の展示即売も行われ、猪飼祐一さんや清水一二さんが作陶した湯飲みや酒器などが並んだ。

(2023年5月21日付 読売新聞朝刊より)

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