奈良・聖林寺の国宝「十一面観音
展覧会のタイトルにある「三輪山信仰」は、能楽とも深い関わりがあるという。聖林寺の国宝・十一面観音菩薩立像をこよなく愛する彫刻家で奈良県立美術館長の籔内佐斗司さん(68)と、能楽小鼓方の人間国宝・大倉源次郎さん(63)が、能「三輪」や観音像について語り合った。
籔内: 人類が作った全彫刻から100体を選ぶとしたら欠かせないと思うほど、この観音様が好きです。プロポーションにお顔立ちなど、あれほど崇高な彫刻は珍しい。保存状態の良さからも、いかに大切にされてきたかがわかります。
大倉: 私も時折、お寺に立ち寄って拝観します。観音は「音を
籔内: 源次郎さんは伝統芸能を、私は彫刻の古典技法を研究し、興味の対象が過去へ向きがちですが、過去を知ると今の我々の状態がわかり、これから先を考えることにもつながる。
大倉: 観音様に向き合うと、過去、現在、未来がつながっていくことを実感できます。
籔内: 桜井の地は、能楽発祥の地と言われているそうですね。
大倉: この地を流れる寺川の上流から宝生、金春、観世、金剛の大和四座の座元がありました。能楽は、大和に伝わる伝説を全国へ発信しようと作られた芸能とも言われています。
籔内: この地を舞台にした「三輪」もありますね。
大倉: 三輪に住む僧の元に里の女が訪れます。僧が女に衣を貸して帰すと、三輪山の神杉の枝にその衣が掛かっていた。そこに神様が乗り移った
籔内: なぜ岩戸隠れの要素があるのですか。
大倉: 桜井市の
籔内: 能楽は単なる芸能ではなく、日本人の古代の記憶や歴史の記録装置のような役割を果たしてきたとも言えますね。
奈良県桜井市の
(2021年6月6日読売新聞から)
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2人の対談は展覧会開幕後、公式サイトから動画でご覧いただけます。
特別展「国宝 聖林寺十一面観音 ― 三輪山信仰のみほとけ」:東京国立博物館・奈良国立博物館 (yomiuri.co.jp)
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