東京・丸の内の三菱一号館美術館で、6月30日から「三菱創業150周年記念 三菱の至宝展」が始まった。
国宝≪曜変天目≫をはじめ、三菱ゆかりの静嘉堂(東京・世田谷)と東洋文庫(東京・本駒込)が所蔵する国宝12点を含む名品が集結。9月12日までの会期中、三菱創業の岩崎家4代が集めた秘蔵コレクションをじっくりと味わうことができる。
三菱を創業し、4代にわたり社長を務めた岩崎彌太郎、彌之助、久彌、小彌太は文化財に多大な関心を抱き、絵画や茶器、太刀、書跡などを多岐にわたり収集した。それらの収集品は現在、彌之助が創設し小彌太が拡充した静嘉堂と、久彌が設立したアジア最大級の東洋学研究図書館である東洋文庫に収蔵されている。
彼らは当時の学者や芸術家とも交流し、その収集の態度は社会に貢献する広い視野を持ったものだったという。
今回の展覧会では、初代岩崎彌太郎から小彌太に至る芸術文化の研究・発展を通じた社会貢献の歴史をたどりつつ、静嘉堂、東洋文庫の所蔵する国宝12点、重要文化財31点を含め、三菱経済研究所の所蔵品をあわせた貴重な作品群100点余りを展示する。
このうち、大名物≪唐物茄子茶入 付藻茄子≫は、足利義満が愛蔵し、戦国時代には松永久秀が織田信長に献上した歴史的な逸品。大坂夏の陣(1615年)で大破するも、見事な漆繕いの技によって現在の姿によみがえった。
また、国宝≪曜変天目(稲葉天目)≫は、内面に浮かぶ大小の斑紋の周囲に、青色や虹色に輝く光彩があらわれた黒釉碗で、完全な形のものは日本に現存する3点のみ。徳川将軍家より3代将軍家光の乳母・春日局の手を経て、淀藩主稲葉家に伝来した至宝だ。
このほか、国宝『古文尚書』、同『史記 夏本紀』などの書跡類も充実。丸の内に
三菱一号館美術館の野口玲一上席学芸員は「富裕層による趣味的なコレクションというより、社会貢献や学術・芸術振興の意識が反映された作品群となっている。静嘉堂と東洋文庫の所蔵品が一堂に会する機会は実はこれまでほとんどなく、貴重な機会といえる」と話す。
2022年には、静嘉堂の展示ギャラリーが東京・丸の内の明治生命館に移転する予定だ。野口さんによると、かつて岩崎彌之助は丸の内に美術館を建設する構想を描き、英国人建築家ジョサイア・コンドルによる設計図もつくられたが、実現には至らなかった。
それだけに、2010年に開館した三菱一号館美術館とあわせ、今回の静嘉堂移転で三菱コレクションが丸の内に集積されることは、「『丸の内に美術館を』という創業家の長年の夢がかなう意味合いもある」(野口さん)といい、関係者の期待は高まりそうだ。
三菱創業150周年記念 三菱の至宝展|三菱一号館美術館(東京・丸の内) (mimt.jp)
開催概要
日程
2021.6.30〜2021.9.12
前期展示:8月9日まで 後期展示:8月11日から
三菱一号館美術館
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2
一般1900円、高校・大学生1000円、小中学生無料
休館日
月曜日、8月10日
(祝・振休の場合、7月26日、8月30日、9月6日は開館)
開館時間
午前10時~午後6時 ※入館は閉館の30分前まで
※夜間開館日の詳細は展覧会公式サイトをご確認ください
お問い合わせ
050-5541-8600(ハローダイヤル)
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