紡ぐプロジェクトの助成対象となった「智証大師関係文書典籍」の国清寺外諸寺求法惣目録、三弥勒経疏(上中下巻)の計4巻について、今後の修理方針を話し合う協議が〔2023年〕6月26日、大津市の文化財修理工房・坂田墨珠堂で行われた。
同文書典籍保存活用専門委員会(委員長=下坂守・京都国立博物館名誉館員)の委員らが出席。同席した園城寺の福家俊彦長吏は「これだけの資料が1100年余りにわたり残ってきたことも世界の記憶に登録される要素だと思う。次の世代に伝えることの大切さも広くわかってもらいたい」と述べた。
修理を担当する嘉門一彦・主任技師は、文書の本紙を補強する裏打紙を除去すると、本紙の背に墨書や朱書が見つかったことを報告した。漢字の周囲には、先をとがらせた木や竹の筆記具「角筆」で付けた漢文を訓読するための点があり、委員らは文書を間近に見ながら確認していた。
今後、本紙に新たに裏打ちをするか、付け替える表紙をどのようにするかなどを協議する必要があるという。下坂委員長は「修理を進める中でいろいろな知見が増え、この古文書類の価値がより高まってくると思う。文化財の活用の方法も含めて検討していかねばならない」と話した。
(2023年7月2日付 読売新聞朝刊より)
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