2024.8.20
特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」(東京国立博物館)
弘法大師・空海(774~835年)が制作に関わった現存唯一の「両界
今年〔2024年〕、創建1200年を迎える神護寺(京都市右京区)が所蔵する高雄曼荼羅は、胎蔵界、金剛界の2幅(各縦横約4メートル)。紫色の
修理は「岡墨光堂」(京都市中京区)が担当した。その過程で、京博の降幡順子・保存科学室長は、光の波長で物質を特定する科学的な分析を行い、紫色が紫根に由来する可能性を指摘した。
さらに、正倉院事務所の中村力也・保存課長は、修理以前に落下して保存されていた曼荼羅の繊維片を、色素を分離できる技法「クロマトグラフィー」で分析した。日本や中国に分布する
紫根で濃い紫色に染めた「
寺の由来をつづる「神護寺略記」には、高雄曼荼羅が淳和天皇の願いで制作されたと記されている。京博の大原嘉豊・教育室長(仏画)は「これほど高価な染料を大量に動かせるのは朝廷以外に考えにくい。天皇が制作を依頼したという記述を裏付ける」と指摘する。
高雄曼荼羅は、9月8日まで東京国立博物館(東京都台東区)で開催中の特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」(読売新聞社など主催)で公開されている。
(2024年8月17日付 読売新聞朝刊より)
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